Question
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代行割れの厚生年金基金の解散に伴い、債務者である中小企業が企業年金連合会(以下「連合会」という。)に積立不足額を納付することにより当該企業に損失が生じる場合においては、当該企業の債務者区分をどのように判断すればよいですか。
1.金融検査マニュアルにおいては、中小企業の債務者区分については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力等を総合的に勘案し、その経営実態を踏まえて判断することとされています。したがって、債務者である中小企業が連合会に積立不足額を納付することにより当該企業に損失が生じ、赤字や債務超過となる場合であっても、こうした一時的な損失のみをもって債務者区分を判断することは適当ではなく、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、その返済能力に大きな変化がないと考えられる債務者については、債務者区分を維持することと判断して差し支えありません。2.なお、連合会に積立不足額を納付することにより当該企業の返済能力に問題が生じると認められる場合においても、当該企業の経営改善の見込み等を勘案しつつ、金融機関において、「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」の策定を支援し、その結果、同計画が策定されている債務者については、債務者区分を「要注意先」と判断して差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
減価償却費の負担により赤字となっているが、キャッシュ・フローは黒字であり、金融機関に約定どおり借入金を返済している中小企業については、債務者区分をどのように判断すればよいですか。
1.債務者区分の判断に当たっては、金融検査マニュアルにおいて、「債務者区分は、債務者の実態的な財務内容、資金繰り、収益力等により、その返済能力を検討し、債務者に対する貸出条件及びその履行状況を確認の上、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案し判断するもの」とされています。2.一方で、中小・零細企業等の債務者区分の判断に当たっては、金融検査マニュアルにおいて、「当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて判断するもの」とされており、これを受けて、金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕において、「企業が赤字で返済能力がないと認められる場合であっても、(中略)赤字の要因や返済状況、返済原資の状況を確認」し、返済能力について特に問題がないと認められる債務者については、債務者区分を「正常先」と判断して差し支えないものとされています。3.減価償却費の負担により赤字となっている債務者については、債務者区分の判断に当たり、金融検査マニュアルに記載されている「キャッシュ・フローによる債務償還能力」に問題が生じるおそれがありますが、仮にそのような場合であっても、金融機関に約定どおり借入金を返済している中小企業については、例えば、・減価償却を定率法で行っていることから、投資後初期の段階における減価償却費負担が大きいことが赤字の要因となっている場合や、・金融機関への返済資金を代表者等から調達している場合なども考えられますので、金融機関において、「赤字の要因や返済状況、返済原資の状況を確認」することが必要であり、その上で、返済能力について特に問題がないと認められる債務者については、その債務者区分を「正常先」と判断して差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
一般担保として不適格なものとしてどのようなものがありますか。
保安林・道路・沼などは基本的に「客観的な処分可能性があるもの」という要件を満たさず、一般担保としては不適格なものであると考えられます。これらについて、一般担保としている事例が認められたため、周知の観点から今回の改訂で不適格な旨明記したものです。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「担保評価額については、必要に応じ、評価額推移の比較分析、償却・引当などとの整合性」など多面的な視点から検証を行うとありますが、償却・引当などとの整合性とは具体的にどのようなことを意味しているのですか。
1.担保評価と償却・引当とは表裏一体の関係にあるため、担保評価を検証する際には、償却・引当基準等との関係をも考慮することが必要であると考えられます。2.昨今の検査において、過年度の償却・引当(貸倒実績率等)データにおける破綻懸念先に対する債権の毀損実績を検証したところ、不動産担保評価の問題等からⅢ分類額を超える毀損実績が認められているにも関わらず、原因分析が不十分なことから、適正な償却・引当額が算出されていない事例等が認められているところです。したがって、担保評価に基づく分類額及び償却・引当額と過年度の償却・引当のデータとの不整合などが認められる場合には、今後の償却・引当額の算出等への影響も懸念されることから、検査に当たっては特に留意する必要性があるとの趣旨から記載を追加したものです。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
土壌汚染、アスベストの評価については、具体的な評価基準や評価手法は確立されておらず、また影響度についても売買事例などの実例が乏しい中で、本記載を追加した理由は何ですか。
1.土壌汚染、アスベストについては、担保評価に際して留意すべき基本的事項であると考えられるため、今般明確化の観点から記載を追加したものです。2.どこまで実際に調査を行うかについては、問題発生の蓋然性の高さや、債務者の状況によって様々であり一概に申し上げることは困難ですが、例えば、問題が明らかになっている場合において、それを勘案しないということは、担保の目的に照らし、適当でないものと考えます。3.なお、一定の評価基準や評価手法に基づく評価や、売買事例などに基づく影響度評価といったことを、直ちに全担保に網羅的に適用し、再評価を行うべきという趣旨ではありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「賃貸ビル等の収益用不動産の担保評価に当たっては、原則、収益還元法による評価とし、必要に応じて、原価法による評価、取引事例による評価を加えて行っているかを検証する」と改訂したのはどのような理由からですか。
1.賃貸ビル等の収益用不動産の担保評価に当たっては、その収益性に着目した取引が多いことから、これを原則とすることを明確化することがその趣旨であり、収益還元法による評価に基づく価格のみによることを可としているものではありません。例えば、資料の限界などにより、収益還元法による評価の信頼性が乏しい場合には、原価法や取引事例による評価によってこれを補うことを想定しています。2.なお、金融機関が有するすべての収益担保物件について、精緻な収益還元法による評価をこの際求めることとするという意味の改訂ではありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「裁判所による最低売却価額」を「競売における買受可能価額」と改訂を行った理由は何ですか。
1.裁判所の競売手続における最低売却価額制度に関して、民事執行法の改正(平成17年4月1日施行)によって、従来の最低売却価額に相当する「売却基準価額」から2割を控除した額を「買受可能価額」とすることとなり、買受申出は、この価額以上とされたことに伴い今回改訂を行いました。2.したがって、債権保全の観点から、より回収が確実と見込まれる額として、買受可能価額を処分可能見込額としたものです。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
依頼方法等に留意する理由は何ですか。
依頼方法、依頼先との関係に留意する理由は、例えば、鑑定先に自己に都合の良いデータを示し特定の価格で評価することを求めたり、関係の深い鑑定評価先に、恣意的な評価を算出してもらう等、評価の算出にあたり不適切な事例が見受けられたことを踏まえ、これらの点に留意することについて検査官に周知する目的から記載を追加したものです。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
保証が当該金融機関の子会社による場合において、「その支援等を控除した場合等の状況」とは具体的にはどのようなことですか。また、一般保証と判断する上で、それをどのように踏まえるのですか。
保証能力の検証に当たっては、当該事業会社の実態を十分に把握することが必要ですが、保証が子会社によるものである場合には、仮に親会社からの支援等がなかった場合の当該会社の状況を勘案することが、十分な実態把握につながる場合も想定されるため今回例示したものです。なお、「支援等」には保証料の補給や増資、その他実質的に支援に類似する行為を想定していますが、保証能力はこれらの実態を踏まえ総合的に勘案し判断することになります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「十分な資本的性質が認められる借入金」とは、どのようなものですか。債務者の属性や資金使途等によって制限されるのですか。
1.債務者の財務内容の把握、評価は、財務諸表の数字といった形式にとらわれず、実態的に行う必要があります。「十分な資本的性質が認められる借入金」とは、貸出条件が資本に準じた借入金のことであり、当該借入金は、債務者区分の検討に当たって、資本とみなして取り扱うことが可能になります。2.なお、本取扱いは、あくまでも借入金の実態的な性質に着目したものであり、債務者の属性(債務者区分や企業の規模等)、債権者の属性(金融機関、事業法人、個人等)や資金使途等により制限されるものではありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「『十分な資本的性質が認められる借入金』とは、貸出条件が資本に準じた借入金」とのことですが、どのような観点から資本類似性を判断するのですか。
「十分な資本的性質が認められる借入金」は、借入金でありながら、資本とみなして取り扱うことを可能とするものであることから、貸出条件の面において、資本に準じた性質が確保されていることが必要です。基本的には、償還条件、金利設定、劣後性といった観点から、資本類似性を判断することとなります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「十分な資本的性質が認められる借入金」として取り扱われるためには、どのような償還条件を設定すればよいですか。
1.「十分な資本的性質が認められる借入金」の償還条件については、資本に準じて、原則として、「長期間償還不要な状態」であることが必要です。2.具体的には、契約時における償還期間が5年を超えるものであることが必要であり、金融機関の自己資本として算入できる期限付劣後債務についても、同様の取扱いとなっています。3.また、期限一括償還が原則であり、例えば、「十分な資本的性質が認められる借入金」として例示した日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度」も期限一括償還となっています。ただし、期限一括償還でなくても、長期の据置期間が設定されており、期限一括償還と同視し得るような場合には、「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなすことが可能です。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「十分な資本的性質が認められる借入金」として取り扱われるためには、どのような金利設定をすればよいですか。
1.「十分な資本的性質が認められる借入金」の金利設定については、資本に準じて、原則として、「配当可能利益に応じた金利設定」であることが必要です。2.具体的には、業績連動型が原則であり、赤字の場合には利子負担がほとんど生じないことが必要となりますが、その場合、株式の株主管理コストに準じた事務コスト相当の金利であれば、利子負担がほとんど生じないものとして「十分な資本的性質が認められる借入金」と判断して差し支えありません。3.なお、赤字の場合の具体的な金利水準については、例えば、「十分な資本的性質が認められる借入金」として例示した日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度」では0.4%または0.9%となっていますが、この水準に限定されるものではなく、金融機関や債務者の状況等に応じた事務コスト相当の金利であれば差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
赤字の場合の具体的な金利水準については、「金融機関や債務者の状況等に応じた事務コスト相当の金利であれば差し支えありません」とのことですが、債務者の状況等に応じたコスト計算を行っていない場合には、どのようにすればよいですか。
「事務コスト相当の金利」については、債務者の状況等に応じたコスト計算を行い、事務コストを算出することが原則ですが、こうしたコスト計算を行っていない場合には、簡便法として、「経費率」を用いて、事務コストを算出して差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「十分な資本的性質が認められる借入金」として取り扱われるためには、劣後性に関して、どのような点に留意すればよいですか。
1.「十分な資本的性質が認められる借入金」の劣後性については、資本に準じて、原則として、「法的破綻時の劣後性」が確保されていることが必要です。2.ただし、既存の担保付借入金から転換する場合のように、担保解除を行うことが事実上困難であるため、「法的破綻時の劣後性」を確保できないような場合には、例えば、法的破綻以外の期限の利益喪失事由が生じた場合において、他の債権に先んじて回収を行わないことを契約するなど、少なくとも法的破綻に至るまでの間において、他の債権に先んじて回収しない仕組みが備わっていれば、「法的破綻時の劣後性」が必ずしも確保されていなくても差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
担保付借入金は、「十分な資本的性質が認められる借入金」には該当しないのですか。
1.「十分な資本的性質が認められる借入金」は、資本に準じて、原則として、「法的破綻時の劣後性」が確保されている必要があることから、担保付借入金は、基本的には、「十分な資本的性質が認められる借入金」には該当しません。2.ただし、既存の担保付借入金から転換する場合などのように、担保解除を行うことが事実上困難であるため、「法的破綻時の劣後性」を確保できないような場合には、例えば、法的破綻以外の期限の利益喪失事由が生じた場合において、他の債権に先んじて回収を行わないことを契約するなど、少なくとも法的破綻に至るまでの間において、他の債権に先んじて回収しない仕組みが備わっていれば、担保付借入金であっても、「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなして差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「担保解除を行うことが事実上困難」とは、どのような場合をいうのですか。
1.既存の担保付借入金から転換する場合であって、担保からの回収可能性がある場合には、担保解除を行うことは債権管理上困難な場合が多いと考えられ、基本的には、こうしたケースが「担保解除を行うことが事実上困難」な場合に該当すると考えられます。2.具体的には、例えば、既存の担保付借入金を「十分な資本的性質が認められる借入金」に転換しようとする事例において、転換時の担保評価額で、一部でも担保からの回収を見込むことができるような場合には、「担保解除を行うことが事実上困難」な場合に該当すると判断して差し支えありません。3.また、特に、東日本大震災の被災地などでは、転換時の担保評価額では、担保からの回収を見込むことができない場合であっても、復興による担保の上昇見込み等を勘案すれば、将来、担保からの回収を一定程度見込むことができるような場合には、「担保解除を行うことが事実上困難」な場合に該当すると判断して差し支えありません。4.このほか、既存の担保付借入金を「通常の借入金」と「十分な資本的性質が認められる借入金」に分割しようとする事例については、(9-21)を参照してください。5.なお、「担保解除を行うことが事実上困難」な場合には、様々な事例があり得るものと考えられ、上記の事例に限定される訳ではありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
既存の担保付借入金を「通常の借入金」と「十分な資本的性質が認められる借入金」に分割しようとする事例において、担保からの回収見込額が既存の担保付借入金の一部にとどまる場合には、「担保解除を行うことが事実上困難」か否かをどのように判断すればよいですか。
1.担保付借入金は、基本的には、「十分な資本的性質が認められる借入金」には該当しませんが、「担保解除を行うことが事実上困難」であるため、「法的破綻時の劣後性」を確保できないような場合に限って、例外的に、「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなして差し支えないこととしています。2.したがって、「既存の担保付借入金を『通常の借入金』と『十分な資本的性質が認められる借入金』に分割しようとする事例において、担保からの回収見込額が既存の担保付借入金の一部にとどまる場合」には、担保からの回収見込額を、先ずは「通常の借入金」に優先的に充当した上で、その残額部分(「十分な資本的性質が認められる借入金」に転換しようとする部分)について、「担保解除を行うことが事実上困難」か否かを判断することとなります。3.このため、担保からの回収見込額を「通常の借入金」に優先的に充当することにより、転換時の担保評価額では、その残額部分(「十分な資本的性質が認められる借入金」に転換しようとする部分)について、担保からの回収を見込むことができない場合には、原則として、「担保解除を行うことが事実上困難」な場合には該当しません。ただし、そのような場合であっても、経営改善計画等の進行に伴い、「通常の借入金」の返済が進んで、担保余力が生じることにより、その残額部分(「十分な資本的性質が認められる借入金」に転換しようとする部分)について、担保からの回収を見込むことができるような経営改善計画等が策定されている場合には、「担保解除を行うことが事実上困難」な場合に該当すると判断して差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
保証付借入金は、「十分な資本的性質が認められる借入金」には該当しないのですか。
1.「十分な資本的性質が認められる借入金」は、資本に準じて、原則として、「長期間償還不要な状態」、「配当可能利益に応じた金利設定」、「法的破綻時の劣後性」といった条件が必要ですが、保証付借入金は、保証が実行された場合には、これらの条件が、保証人に引き継がれないことから、基本的には、「十分な資本的性質が認められる借入金」には該当しません。2.ただし、「長期間償還不要な状態」、「配当可能利益に応じた金利設定」、「法的破綻時の劣後性」といった条件が、保証の実行後においても確保できる仕組みが備わっていれば、保証付借入金であっても、「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなして差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「十分な資本的性質が認められる借入金」について、期限前弁済は可能ですか。
1.債務者自らの意思により期限前弁済を行うことは、差し支えありません。2.ただし、債権者の意思により、期限前回収が可能な契約が付されている借入金については、基本的には、「長期間償還不要な状態」であるとは認められないことから、「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなすことはできません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度」や中小企業再生支援協議会版「資本的借入金」について、「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなすことは可能ですか。
1.日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度」については、①償還条件が、5年超の期限一括償還であり、「長期間償還不要な状態」である②赤字の場合には利子負担がほとんど生じないなど、「配当可能利益に応じた金利設定」である③劣後ローンであり、「法的破綻時の劣後性」が確保されているという商品設計であり、資本に準じた内容となっています(「挑戦支援資本強化特例制度」の概要については別紙1参照)。2.また、中小企業再生支援協議会版「資本的借入金」については、①償還条件が、15年または5年超の期限一括償還であり、「長期間償還不要な状態」である②赤字の場合には利子負担がほとんど生じないなど、「配当可能利益に応じた金利設定」である③「無担保型」は、劣後ローンであり、「法的破綻時の劣後性」が確保されているほか、「有担保型」は、「法的破綻に至るまでの間において、他の債権に先んじて回収しない仕組み」が確保されているという商品設計であり、資本に準じた内容となっています(中小企業再生支援協議会版「資本的借入金」の概要については別紙2参照)。3.したがって、両制度に係る借入金については、「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなして差し支えありません。(注1)「十分な資本的性質が認められる借入金」については、原則として、「長期間償還不要な状態」、「配当可能利益に応じた金利設定」、「法的破綻時の劣後性(『法的破綻時の劣後性』を確保できないような場合は、法的破綻に至るまでの間において、他の債権に先んじて回収しない仕組み)」といった条件が確保されていれば、上記の借入金と同様の商品設計に限定される訳ではありません。(注2)上記の両制度も含め、「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなすことが可能な関係省庁等の施策の代表例については、別紙3を参照してください。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
他の金融機関からの「十分な資本的性質が認められる借入金」については、資本とみなすことは可能ですか。
他の金融機関からの借入金であっても、資本に準じて、原則として、「長期間償還不要な状態」、「配当可能利益に応じた金利設定」、「法的破綻時の劣後性」といった条件が確保されていれば、「十分な資本的性質が認められる借入金」として、当該借入金を債務者の資本とみなして差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
他の金融機関からの借入金であっても、「条件が確保されていれば、『十分な資本的性質が認められる借入金』として、当該借入金を債務者の資本としてみなして差し支えありません」とのことですが、他の金融機関からの借入金の条件をどのように確認すればよいですか。
1.他の金融機関からの借入金の条件については、例えば、債務者自身から契約内容を直接確認する方法が考えられます。2.なお、他の金融機関からの借入金を「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなす場合には、当該借入金の条件が、その後変更されることも考えられることから、例えば、債務者から決算書を徴求する際に条件変更の有無を確認するなどして、条件が満たされているか否かを定期的にチェックする必要があります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「十分な資本的性質が認められる借入金」として取り扱われるためには、既存の借入金からの転換であることが必要ですか。
既存の借入金からの転換に限らず、新規融資であっても、資本に準じて、「長期間償還不要な状態」、「配当可能利益に応じた金利設定」、「法的破綻時の劣後性」といった条件が確保されていれば、「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなして差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
例えば、匿名組合契約に基づく出資など、融資以外の方法であっても、「十分な資本的性質が認められる借入金」に準じて、資本とみなすことは可能ですか。
1.例えば、匿名組合契約に基づく出資など、融資以外の方法であっても、資本に準じて、原則として、「長期間償還不要な状態」、「配当可能利益に応じた金利設定」、「法的破綻時の劣後性」といった条件が確保されていれば、「十分な資本的性質が認められる借入金」に準じて、資本とみなして差し支えありません。2.ただし、「十分な資本的性質が認められる借入金」は、当該借入金を「債務者の事業全体」の資本とみなすことを可能とするものであることから、例えば、匿名組合契約に基づく出資の場合、少なくとも債務者の事業全体が赤字の場合には、仮に出資の対象事業が黒字であったとしても、配当負担がほとんど生じない仕組みとなっている必要があります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「十分な資本的性質が認められる借入金」を資本とみなす場合、資本とみなす額について留意すべき点はありますか。
1.「十分な資本的性質が認められる借入金」は、資本に準じて、原則として、「長期間償還不要な状態」であることが必要です。したがって、償還まで相当の期間以上)を有する負債については、残高の100%を資本とみなす一方で、残存期間が5年未満となった負債については、1年毎に20%ずつ資本とみなす部分を逓減させる取扱いとします。残存期間資本とみなす部分負債とみなす部分5年以上100%-4年以上5年未満80%20%3年以上4年未満60%40%2年以上3年未満40%60%1年以上2年未満20%80%1年未満-100%2.なお、「十分な資本的性質が認められる借入金」に期限の利益の喪失条項が付されている事例において、当該借入金に債務不履行等の期限の利益の喪失事由が発生した場合には、喪失に係る債権者の権利行使が行われない場合であっても、債務不履行状態の解消や条件の見直し等により喪失事由が解消するまでの間、通常の負債とみなして債務者区分の検討を行います。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「十分な資本的性質が認められる借入金」については、どのように貸倒引当金を算定すればよいですか。
「十分な資本的性質が認められる借入金」に対する貸倒引当金の算定方法については、「資本的劣後ローン等に対する貸倒見積高の算定及び銀行等金融機関が保有する貸出債権を資本的劣後ローン等に転換した場合の会計処理に関する監査上の取扱い」(平成16年11月2日日本公認会計士協会)を参照してください。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
経営改善の一環として「十分な資本的性質が認められる借入金」を資本とみなす場合には、経営改善計画の策定が必要となるのでしょうか。
1.債務者区分の判断に当たっては、実態的な財務内容のみならず、収益力の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力等、多くの材料を総合的に勘案する必要があります。2.したがって、業況が著しく低調な債務者(破綻懸念先)について、「十分な資本的性質が認められる借入金」を資本とみなすことにより実態的な財務内容の改善が図られたとしても、収益力が改善する見通しがなく、業況が著しく低調な状態が継続するのであれば、金融機関の資産査定において、債務者区分を上位に変更することが困難となる可能性が高いと考えられます。3.このような点に鑑みれば、少なくとも破綻懸念先に対する「十分な資本的性質が認められる借入金」を資本とみなし、債務者区分のランクアップにつなげるためには、詳細かつ具体的な経営改善計画の策定までは求められないとしても、一定の経営改善の見通しがあることが必要と考えられます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「十分な資本的性質が認められる借入金」を貸し出している金融機関における当該貸出金については、「貸出条件緩和債権の判定」において、通常の貸出金と同様に取り扱うのですか。
1.期中において契約の見直しを行い、通常の債権から「十分な資本的性質が認められる」債権へと転換した場合、通常の貸出金と同様、「債務者の経営再建又は支援を図ること」が目的か、「債務者に有利となる取決め」を行っているかという基準で判断を行います。(銀行法施行規則第19条の2第1項第5号ロ(4)参照)2.このうち、金利を通常の固定金利等から業績に連動した金利設定へ変更した場合、その条件変更が債務者に有利となる取決め(金利減免)に該当するか否かの判断に当たっては、条件変更後に前期の業績に応じて決定された期間毎の金利と基準金利とを比較するのではなく、条件変更時における当該債務者に対する「取引の総合的な採算」を勘案し、当該貸出金に対して、基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されているか否かで判断することになります。3.当該債務者に対する「取引の総合的な採算」の勘案に当たっては、当該債務者と同等の信用リスクを有する企業の過去の業績のデータが蓄積されている場合には、このデータを参考にして、与信期間を通じた総合的な採算性を算出する等の方法が考えられます。4.なお、「十分な資本的性質が認められる借入金」が貸出条件緩和債権に該当する場合であっても、他の債権が要管理債権に該当しない場合には、「要管理先である債務者」には該当しません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「十分な資本的性質が認められる借入金」はどのような場合に用いられるのですか。
1.「十分な資本的性質が認められる借入金」を用いる場合の制限等はありませんが、一般に資本強化が必要とされる場合、すなわち創業時、事業拡張・新規事業参入時や経営改善の一環としての活用が想定されます。(注)例えば、「十分な資本的性質が認められる借入金」として例示した日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度」は、主として、事業拡張・新規事業参入時における活用が想定され、中小企業再生支援協議会の中小企業再生支援協議会版「資本的借入金」は、経営改善の一環としての活用が想定されます。2.また、東日本大震災の影響や急激な円高の進行等から、資本不足に直面している企業の再生支援の一環としての活用も想定されています
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
平成23年11月の運用明確化措置前に、既に、運用明確化後の貸出条件を満たしている借入金についても、「十分な資本的性質が認められる借入金」とみなすことは可能ですか。
運用明確化措置前に、「十分な資本的性質が認められる借入金」の貸出条件を満たしているものについても、同借入金とみなして差し支えありません。
金融庁
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「十分な資本的性質が認められる借入金」は、自己資本比率規制における信用リスク・アセットの計算上、貸出として取り扱われるのですか。
貸出として取り扱われます。例えば、標準的手法の場合、「十分な資本的性質が認められる借入金」が、自己資本告示上の中小企業向けエクスポージャーとしての要件を満たすものであれば、リスク・ウェイトは75%となります。
金融庁
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「貸出条件緩和債権関係Q&A」を参照する旨を追加した理由は何ですか。
従来より、要管理先債権の検証に当たっては、金融検査マニュアルに加え、別途公表されている、「貸出条件緩和債権関係Q&A」を参照していましたが、この点を周知する観点から記載を追加したものです。また、「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」についても同様です。
金融庁
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本項目については、中小企業の資金繰りを支援するための時限的な措置なのでしょうか。
本項目については、中小企業の資金繰り支援のための時限的な措置ではなく、大企業と比較してリストラの余地等も小さく、経営改善に時間がかかることが多いなどという中小企業の特性を踏まえた恒久的な措置です。
金融庁
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「貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に当該経営再建計画を策定する見込みがあるときには」とありますが、「最長1年以内」の起点はいつになるのでしょうか。
「最長1年以内」の起点は、直近の「貸出条件の変更を行った日」となります。
金融庁
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本項目については、中小企業金融円滑化法の施行日(21年12月4日)以前に貸出条件の変更を行い、貸出条件緩和債権とされた債権を有する債務者に対しても適用できるのでしょうか。
本項目は、中小企業金融円滑化法の施行日以前に行われた貸出条件の変更についても適用することが可能です。この場合においても「最長1年以内」の起点は、直近の「貸出条件の変更を行った日」となります。
金融庁
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「貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に当該経営再建計画を策定する見込みがあるときには、当該債務者に対する貸出金は当該貸出条件の変更を行った日から最長1年間は貸出条件緩和債権に該当しない」とありますが、本項目を適用した債務者が、再度の貸出条件の変更を行った場合には、どのように判断すればよいですか。
1.中小企業は、人員が少ない等の理由により、経営再建計画を策定するのに時間がかかる場合もあると考えられます。本項目は、そのような中小企業の特性を踏まえ、将来的に経営改善が見込まれる中小企業について、貸出条件緩和債権に該当しない要件を恒久的に拡充したものです。また、最長1年間の経営再建計画策定の猶予期間を設けることは、金融機関が当該中小企業に対するコンサルティング機能を十分に発揮することによって、しっかりとした計画の策定に資するものと考えています。2.このような本項目の趣旨を踏まえると、本項目を適用した債務者については、最長1年間の経営再建計画策定の猶予期間中に「実現性の高い抜本的な経営再建計画」が策定されていることが原則です。このため、本項目を適用した債務者が、最長1年間の経営再建計画策定の猶予期間中に計画を策定しないまま、再度の貸出条件の変更を行った場合において本項目を再度適用しようとするときは、計画を策定できなかった経緯を踏まえ、経営再建計画策定の見込みについて更に慎重に判断することが求められます。本項目の趣旨に鑑みると、経営実態に変化がないにもかかわらず、計画が策定されないまま、本項目を繰り返し適用するような取扱いは、不適切であると考えられます。
金融庁
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本項目を適用した債務者が、1年以内に計画を策定できなかった場合、または1年以内に計画を策定できないことが明らかになった場合はどのように取り扱うのでしょうか。
基準金利を確保しているなど特段の事情がなければ、条件変更後1年以内に計画が策定できない場合、または、1年以内に計画ができないことが判明した場合には、貸出条件緩和債権に該当します。
金融庁
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金融機関が債務者に対して複数の債権を保有しており、それらの債権の一部について貸出条件の変更を行った場合はどのように取り扱うのでしょうか。
金融機関が債務者に対して複数の債権を有しており、それらの一部についてのみ貸出条件の変更を行った場合であっても、当該貸出条件の変更を行った債権以外の債権の状況も考慮に入れた上で、経営再建計画が策定されることが通常であると考えられますので、そうした場合には、全ての債権について正常債権と判断して差し支えありません。
金融庁
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本項目については、破綻懸念先についても適用されるのでしょうか。
本項目は、貸出条件緩和債権からの卒業基準に関する検証ポイントです。したがって、破綻懸念先については適用されません。
金融庁
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本項目の対象となる中小企業の範囲について、客観的な基準は定められていませんが、金融機関の自己査定基準の中で、対象となる中小企業の範囲について、数値基準を定める必要がありますか。
1.中小企業の範囲(定義)について、例えば中小企業基本法では資本の額や従業員数等に基づく数値基準を定めていますが、本マニュアルではこうした数値基準を定めていません。2.これは、中小企業の特性を踏まえ、その経営実態を適切に把握するためには、数値基準に該当するか否かではなく、当該企業が本マニュアルに記載する中小企業の特性を有しているか否かという実態により判断することが適切と考えられるためです。3.したがって、対象となる中小企業の範囲について、その経営実態にかかわらず、資本の額や従業員数等の外形的な数値による基準を定めることは適切でないと考えられます。
金融庁
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合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画が策定されており、卒業基準を満たしている(貸出条件緩和債権に該当しない)ことが明らかな債務者についても、そもそも債務者に有利となる取決めか(基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されているか)につき検討しなければならないのですか。
1.貸出条件緩和債権の要件である「債務者に有利となる取決めを行った貸出金」について、監督指針では「基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていない債権が考えられる」と記載しています。したがって、基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていれば、貸出条件緩和債権には該当しないことになります。一方、基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていなくても、卒業基準を満たしていれば貸出条件緩和債権には該当しないことになります。つまり、「卒業基準を満たしているか」、「基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されているか」という2つの要件のうち、どちらか一つを満たしていれば貸出条件緩和債権には該当しないことになります。また、検討の際、どちらかを先に検討しなくてはいけないということはありません。(注)平成20年11月の監督指針改定により、貸出条件緩和債権の卒業基準である「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」の要件から、「計画を踏まえた信用リスクの低下及び計画の不確実性を加味した基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていると見込まれること」との記載が削除されています。したがって、卒業基準を満たしているかを検討する際には、金利水準の検討を行う必要はなくなっています。2.ただし、条件変更を行った時点で基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていれば、その後、基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保できなくなったからといって貸出条件緩和債権に該当することはありませんが、条件変更を行った時点で卒業基準を満たす計画が策定されていても、進捗状況が計画を大幅に下回るなどして卒業基準を満たさなくなった場合には、貸出条件緩和債権に該当する可能性があることに留意して下さい。(注)進捗状況が計画を大幅に下回った場合、債務者区分が破綻懸念先にランクダウンする可能性も十分に考えられます。
金融庁
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合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画については、「金融機関の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能となる場合」は計画終了時点における債務者区分が要注意先でも差し支えないとされていますが、これは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
1.一般に、中小企業はキャッシュフローに問題が生じない限り、事業の継続性を確保できる場合が多い一方で、キャッシュフロー不足から経営破綻するケースも少なくありません。したがって、「自助努力により事業の継続性を確保することが可能」とは、企業の自助努力によりキャッシュフローが確保できていることが前提となります。2.「金融機関の再建支援」については、金融機関が融資先企業のキャッシュフローを支援するため、償還条件や金利等の貸出条件について、同程度の信用リスク・資金使途の融資と比べて、明らかに有利な条件で融資をしている場合等が考えられます。なお、この際、同程度の信用リスク・資金使途の融資の平均的な条件と比べて少しでも有利な条件であれば、直ちに「金融機関の再建支援」と捉える必要はありません。同程度の信用リスク・資金使途の融資であっても、融資条件は一定の幅があると考えられますが、この一定の幅を明らかに超えていると判断される場合には、「金融機関の再建支援」に該当すると考えられます。(注)計画終了時に貸出条件を緩和した債権が残存しているからといって、直ちに金融機関の再建支援を受けていると判断する必要はありません。例えば、上記の一定の幅の範囲内で条件緩和(リスケ等)を行った場合には、金融機関の再建支援を受けていると捉える必要はありません。3.したがって、例えば、計画終了時点で、キャッシュフローは十分あり、金融機関の再建支援を受けることなく、約定どおりに返済を行うことは可能であるが、債務超過の解消には更に一定の時間が必要であることから、債務者区分は要注意先にとどまることが想定されるような経営改善計画については、卒業基準を満たすと判断できる可能性が高いと考えられます。
金融庁
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条件変更の時点では、経営改善計画が策定されていなかったが、その後合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画を策定した場合には、卒業基準を満たすと判断して差し支えないでしょうか。また、条件変更の時点では、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の要件を満たさない計画が策定されており、その後の状況の変化により、要件を満たすようになった場合も、卒業基準を満たすと判断して差し支えないでしょうか。
1.合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画が策定されているかどうかは、自己査定の都度、その時点での材料を基に判断を行うことになります。したがって、条件変更を行った時点で経営改善計画が策定されていない、あるいは条件変更を行った時点の経営改善計画が合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の要件を満たしていない場合であっても、資産査定の時点で合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の要件を満たす計画が策定されていれば、卒業基準を満たすことになります。2.なお、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の要件のうち、計画期間については、計画が策定されてから終了するまでの期間ではなく、自己査定を行った時点から計画が終了するまでの期間で判断します。
金融庁
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債務者である中小企業が経営改善計画を策定していない場合でも、今後の経営改善の見込みがあれば計画が策定されている場合と同じように取り扱うとのことですが、経営改善の見込みはどのように判断すればいいのですか。
1.中小企業は大企業のように大部で精緻な経営改善計画を策定できない場合が多いと考えられます。また、経営改善への取組みがどのように財務内容や収益力の向上につながるか数値面での分析ができない、あるいは経営改善のために具体的に何をすべきか分からないといった場合も考えられます。2.したがって、債務者自身が経営改善計画を策定していない場合であっても、今後の経営改善が見込まれる場合には、経営改善計画が策定されている場合と同じように取り扱うこととしています。例えば、経営改善への取組みがどのように財務内容や収益力の向上につながるか数値面での分析ができないため、債務者が経営改善計画を策定できない場合には、債務者に代わって金融機関がこれを分析することも認められます。また、債務者が経営改善のために具体的に何をすべきか分からない場合には、金融機関が経営改善の助言・指導を行い、債務者と協力して経営改善に向けた取組み方針を策定し、これに基づく経営改善の見込みについて分析を行うことも認められます。3.一般に、経営改善のためには、収益力の向上が必要と考えられますが、収益力の向上のためには、売上の増加や費用の削減が必要です。また、経営が改善するまでの間のキャッシュフローが確保されることが前提となります。したがって、経営改善見込みの分析にあたっては、①経営が改善するまでの間のキャッシュフローが確保されているか、②例えば、今後の資産売却予定、役員報酬や諸経費の削減予定、新商品等の開発計画や収支改善計画等、何らかの売上増加や費用削減のための具体的な取組みが行われており、それにより収益力が向上し、経営改善期間終了後も自助努力で事業の継続性が確保できるようになるか、といった観点からの分析が重要になると考えられます4.なお、分析にあたっては、財務内容や収益力がどのように改善していくのかについて精緻な見積りを行う必要まではありませんが、単に改善するという定性的な評価だけでなく、収益等の数値目標を合理的に見積もることが必要です。また、この数値目標については、金融機関と債務者と認識を共有する必要があります。5.いずれにせよ、経営改善は債務者である中小企業が主体的に取り組むものです。その上で、金融機関が必要に応じ適切に支援するなど、双方の密接なコミュニケーションにより経営改善を図って行くことが望まれます。
金融庁
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経営改善計画の進捗状況が大幅に下回っている場合には合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画と取り扱わないとありますが、進捗状況の判定はどのように行うのでしょうか。
1.経営改善計画の進捗状況については、地域密着型金融、信用リスク管理の観点からは、日常的なコミュニケーションを通じて適時に把握することが望ましいと考えられますが、実際には、計画の実績、債務者の状況、当該金融機関と債務者の関係(メイン先か)、債権額、債務者が売上高等の計数を取りまとめる頻度などにより、求められるモニタリングの頻度が異なると考えられます。いずれにせよ、資産査定の際には、直近の売上高、当期利益等の状況も踏まえつつ、進捗状況を分析する必要があります。2.なお、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の進捗状況が大幅に下回っている場合(売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね8割以上確保できない場合等)については、数値だけをもって計画は失敗した(卒業基準を満たさない)と判断するのではなく、計画を下回った要因について分析するとともに、今後の経営改善の見通し等を検討する必要があります。3.その結果、①下回った要因が一時的かつ外部的な影響によるものであった、②何らかの問題があったが既に十分な対応を行っている、などにより今後の経営改善の見通しに特段の問題がないのであれば、卒業基準を満たしていると判断して差し支えありません。
金融庁
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当初策定した経営改善計画が計画どおり進まなかったため、計画を見直した場合、見直した計画が合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の要件を満たせば、卒業基準を満たしていると判断して差し支えないでしょうか。
1.当初策定した経営改善計画について、計画を見直した場合であっても、見直し後の計画が合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の要件を満たすのであれば、卒業基準を満たしていると判断して差し支えありません。2.ただし、実現可能性を十分検討することなく、一見すると合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の要件を満たすような計画を策定し、うまくいかなければ計画を見直すといったプロセスを繰り返した場合には、金融機関による見通し・実現可能性の判断の適切性に疑義が生じることになると考えられます。
金融庁
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中小企業が、計画期間が5年を超え概ね10年以内となっている経営改善計画を策定した場合、当該計画が順調に推移していることが確認できなければ、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画と認められないのでしょうか。
1.字義どおりの解釈としては、進捗状況の確認が必要となりますが、実務上の対応として、当面、計画期間が5年を超え概ね10年以内となっている場合であっても、明らかに達成困難と認められなければ、策定直後であっても合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画とみなして差し支えない旨、検査官に対して指示しています。2.なお、計画の進捗状況を確認した結果、実績が計画を大幅に下回っており、今後も計画通りに推移するとの見通しが立たない場合は、卒業基準を満たさないと判断することになります。
金融庁
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動産や不動産に対する検証項目を変更(減損会計に係るものを追加)した理由は何ですか。また、当該減損は期中に行われることもあると思いますが、どのように検証するのですか。
1.平成17年4月1日から始まる事業年度から適用が開始された減損会計について、その趣旨を十分に踏まえて減損適用に係る検証を行うよう検査官に周知するため、明確化の観点から記載を追加したものです。2.また、検査に当たっては、減損会計を自己査定前の手続とするか否かにかかわらず、基準日時点において減損対象となるものが適切に減損処理が行われているかという点を検証することになります。(なお、期中に切り放し済みの減損額を期末の簿価に戻し入れることを求めるものではないことに留意願います。)
金融庁
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別表2の償却・引当基準の適切性の検証欄に「商品の特性別」を追加したのはなぜですか。
簡易な審査手法で融資実行されている住宅ローンやビジネスローンといったものの中には、その商品の特性により、デフォルト実績が他の商品と大きく異なっている場合もあります。そのような場合、商品の特性に着目した方がより適切な予想損失額を算定できる場合もあることから、グループの一例として、住宅ローンやビジネスローンといった「商品の特性別」に着目することを追加しました。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
本項目の追加により、中小企業については「要管理先」と「その他要注意先」が従来とは異なる基準で判断されることになりますが、貸倒引当金の算出に用いる予想損失率について、過去に遡って貸倒実績率や倒産確率を再計算する必要があるのでしょうか。
1.過去に遡って貸倒実績率や倒産確率を再計算することは実務上困難と考えられることから、本項目を反映した「要管理先」、「その他要注意先」の貸倒実績率や倒産確率が算出されるまでの間は、従来の基準に基づく貸倒実績率等を用いて引当を行っても差し支えないと考えています。2.また、本項目の追加により要管理先からその他要注意先にランクアップする債務者に対する貸倒引当金の戻入れが一定程度発生する可能性がありますが、これは合理的な算出方法を行っている限り、そのこと自体を問題視する必要はないと考えています。(参考)
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
金融機関(債権者)において、債務者における既存の借入金を「十分な資本的性質が認められる借入金」に転換する場合については、法人税法第52条第1項(貸倒引当金)の適用はありますか。
1.金融機関(債権者)において、債務者における既存の借入金を「十分な資本的性質が認められる借入金」(以下「資本性借入金」という。)に転換する場合には、当該借入金に対応する金銭債権について法人税法第52条第1項、法人税法施行令第96条第1項第1号及び法人税法施行規則第25条の2の各要件を満たすものについては、貸倒引当金勘定への繰入れにより損金の額に算入することができます。2.具体的には、「法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定」で、以下のいずれかに該当する事由に基づいて、弁済期限の延長が行われた「資本性借入金」のうち、「当該事由が生じた日の属する事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなつている金額以外の金額」、つまり6年目以降に弁済される金額(担保等による取立見込額を除く。)については、原則として、当該事業年度の所得の金額の計算上、貸倒引当金勘定への繰入れにより損金の額に算入して差し支えありません。①「債権者集会の協議決定」で、合理的な基準(注1)により債務者の負債整理を定めているもの②「行政機関、金融機関その他第三者のあつせんによる当事者間の協議により締結された契約」で、その内容が①に準ずるもの(注1)「合理的な基準」とは、基本的には、すべての債権者についておおむね同一の条件で負債整理の内容が定められていることをいいますが、例えば、利害の対立する複数の債権者の合意により負債整理の内容が定められている場合は、一般的には「合理的な基準」に該当するものとして取り扱われます。また、少額債権について他の債権よりも有利な定めをする場合も「合理的な基準」の範疇に含まれるものと考えられます。(注2)上記の「資本性借入金」のほか、「更生計画認可の決定」、「再生計画認可の決定」又は「特別清算に係る協定の認可の決定」に基づいて、弁済期限の延長が行われた「資本性借入金」についても、同様の取扱いが認められます。3.各事案における税務上の取扱いについては、個別に判断することとなりますが、次のようなものについては、上記2.①又は②に該当するものと判断することができます。・実質債務超過の状態にある債務者に係る「債権者集会の協議決定」又は「行政機関、金融機関その他第三者のあつせんによる当事者間の協議により締結された契約」において、負債整理が合理的な基準に基づいて行われ、債権者が債務免除とともに弁済期限の延長を行ったもの・実質債務超過の状態にある債務者に係る「債権者集会の協議決定」又は「行政機関、金融機関その他第三者のあつせんによる当事者間の協議により締結された契約」において、負債整理が合理的な基準に基づいて行われ、他に債務免除を行った大口債権者が存在する一方で、債権者(少額債権者)が債務免除を行わず弁済期限の延長のみを行ったもの・特定調停において、大部分の債権者が特定調停手続に参加し、負債整理が合理的な基準に基づいて行われ、いずれの債権者も債務免除を行わないものの、一定の金融支援を行う一方で、債権者が弁済期限の延長を行ったもの4.なお、上記3に該当しないもの(例えば、特定調停以外において、いずれの債権者も債務免除を行わない場合であって、弁済期限の延長を行ったものなど)について、法人税法施行令第96条第1項第1号ニの事由に該当し、貸倒引当金勘定への繰入れにより損金の額に算入することができるかどうかは、法人税法施行規則第25条の2に定める事由に該当するかについて、個別に判断することとなります。(注)本回答については、国税庁に確認しています。また、債務者における既存の借入金を「資本性借入金」に転換する場合における税務上の取扱いについては、金融機関から国税局・税務署の相談窓口に対し、個別に事前相談を行い、確認を得ることもできます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
法律系や理工系など、大学(大学院)で金融・経済を学んでこなかった学生でも採用されますか?
直近5年間の新規採用者の出身学部(専攻)は右図の通りです。金融行政には、金融・経済、法律はもちろん、他にも多くの分野の知識が必要です。そのため、これまでも金融・経済系や法律系の他、理工系など多様な専攻分野を持つ方を採用してきました。近年では気候変動・生物多様性リスク、サイバーセキュリティ等の専門分野や暗号資産交換業者等の新しい金融事業者のモニタリング等、金融行政が直面している政策課題の領域が広がっており、より多様な人材を採用したいと考えております。また、官庁訪問に臨むにあたり、金融・経済の専門知識は必要なく、業務に必要な金融・経済の専門知識は、入庁後に実務を通じて身につけることが可能です。金融・経済の勉強をしたことがないものの、興味・関心がある、という方は是非官庁訪問にお越しください。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/common/recruit/newgraduate/recruit/require.html
業務において英語力は要求されますか?
金融はいまも昔もグローバルですから、もちろん、入庁後の業務においては英語力が要求されることがあります。官庁訪問時、英語力によって足切りを設けることはありませんが、英語力向上に向けた意欲は持っていてほしいと考えています。なお、金融庁は、職員の英語力向上をサポートすべく、充実した海外留学制度や語学研修を有していますので、入庁後継続的に英語力を高めていくことが可能です。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/common/recruit/newgraduate/recruit/require.html
本ガイドラインにおける「経営陣」の定義とは何ですか。
本ガイドラインにおける「経営陣」とは、代表権を有する役員のほか、リスク 管理、システム投資、事務を含むマネロン・テロ資金供与対策に責任を有する役 員や関係する営業部門・監査部門に責任を有する役員を含み得る概念ですが、経 営陣の範囲やそのあり方等については、金融機関等において、経営トップ等のリ ーダーシップの下、十分に議論・検討していただくことが重要であると考えます。なお、本ガイドラインにいう「経営陣」の内訳及びその責任分担については、内部規程等の文書により明確化されることが望ましいものと考えます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/r4/202208_amlcft_faq/202208_amlcft_faq.pdf
「経営陣が、管理のためのガバナンス確立等について主導性を発揮する」とは、いかなる態様が考えられますか。
経営陣による関与については、マネロン・テロ資金供与リスクが経営上の重大なリスクになりかねないことを的確に認識し、取締役会等において、マネロン・テロ資金供与対策を経営戦略等における重要な課題の一つとして位置付けることや、経営陣の責任において組織横断的な枠組みを構築し、戦略的な人材確保・教育・資源配分等を実施することが考えられます。なお、取締役会等において、マネロン・テロ資金供与対策を経営戦略等における重要な課題の1つとして位置付けていることの証跡としては、議事録において、報告の内容や経営陣からの指示、コメントが残されていること、ディスクロージャー誌や年次報告書において、マネロン・テロ資金供与リスクを経営上の課題として認識し、リスクに応じた取組みを適切に行っている旨の記載がなされていることなどが考えられます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/r4/202208_amlcft_faq/202208_amlcft_faq.pdf
「業務委託等の方法により(中略)リスクベース・アプローチに基づくマネロン・テロ資金供与対策を講ずることが求められる。」という記載について、受託金融機関等自身の業務を遂行する際における対策と同程度の対策が求められているということでしょうか。委託元金融機関等という第一次的にマネロン・テロ資金供与対策を行う金融機関等が存在することに鑑み、自社における業務より低くても良いと解する余地もあるのでしょうか。それとも、委託元金融機関等は外国送金等を行っていない、あるいは当該分野につき専門性を有しないからこそ業務委託を行っていることからすると、むしろ自社における業務よりも高度の注意義務等が課されると考えるべきなのでしょうか。
送金業務の受付時における送金依頼人・受取人の確認、送金目的の確認やリスクに応じた確認手続等については、第一次的には、委託元金融機関等が実施することになるものと考えられます。委託元金融機関等がこうした確認手続の内容等に関する検討を行うに当たっては、自らのマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢について、その業務上のリスクが自らのリスク許容度の範囲内に収まるよう有効な管理が可能かどうかという観点から検討を行う必要があります。また、受託する金融機関等は、委託元金融機関等の管理態勢を適切に把握すると共に、自らのマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢上、必要な情報を入手する仕組みが構築されている必要があります。必要に応じて、自らの顧客でない委託元の顧客の取引に対しても追加的な照会を行うことを始めとし、取引モニタリング・取引フィルタリング、疑わしい取引の届出、記録保存等のリスクに応じた対応を行うことが考えられます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/r4/202208_amlcft_faq/202208_amlcft_faq.pdf
「『対応が求められる事項』に係る措置が不十分であるなど」の場合には、行政対応が行われると記載されていますが、法律又は政省令に違反していない場合にも、行政処分を行うこともあるという意味でしょうか。
行政対応は、業態ごとに定められている法令に基づき、実施するものです。ご質問の本ガイドラインにおける「対応が求められる事項」は、当該法令の趣旨に鑑み、マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢に係る着眼点等を明らかにしたものであり、この点に係る措置が不十分であるなど、マネロン・テロ資金供与リスク管理態勢に問題があると認められる場合において、法令に基づき行政対応を行う場合があります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/r4/202208_amlcft_faq/202208_amlcft_faq.pdf
「(中略)特定の場面や、一定の規模・業容等を擁する金融機関等の対応について、より堅牢なマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の構築の観点から対応することが望ましいと考えられる事項を『対応が期待される事項』として記載している。」という記載がありますが、特定の場面や、一定の規模・業容等の基準はありますか。
前提となる「特定の場面や、一定の規模・業容等」は、個々の「対応が期待される事項」によって異なりますので、具体的に想定している場面や金融機関等の規模・業容等については、各記載事項をそれぞれご参照ください。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/r4/202208_amlcft_faq/202208_amlcft_faq.pdf
「マネロン・テロ資金供与対策におけるリスクベース・アプローチとは(中略)リスク許容度の範囲内に」と記載されていますが、具体的に「リスク許容度の範囲内」であるとは、どのように考えれば良いでしょうか。
自らが特定・評価したマネロン・テロ資金供与リスクが、当該金融機関等のリスク管理上許容できる範囲内に収まることを意味します。マネロン・テロ資金供与リスクが、当該金融機関等のリスク管理上許容できる範囲内に収まっていることについては、あらかじめ、リスク管理を含むマネロン・テロ資金供与対策に責任を有する経営陣により承認を受けた上で文書化されていることが求められるものと考えます。
金融庁
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「各業態が共通で参照すべき分析と、各業態それぞれの特徴に応じた業態別の分析の双方」について、具体例を教えてください。
「各業態が共通で参照すべき分析」とは、例えば、NRA や FATF の公表しているリスクベース・アプローチに関するガイダンス等、いずれの業態においても参照すべきものが考えられます。また、「業態別の分析」は、FATF のセクターごと(銀行、暗号資産等)のガイダンスのほか、例えば、国際機関や海外当局が公表している業態別の分析や業界団体が会員向けに共有・公表している事例集等が考えられます。
金融庁
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「国によるリスク評価の結果等を勘案しながら、(中略)、自らが直面するマネロン・テロ資金供与リスクを特定すること」とは具体的にどのようなことが求められているのでしょうか。
NRA から読み取ることのできるリスク項目だけでなく、本ガイドラインや本 FAQ を参考にしながら、当該金融機関等が提供する商品・サービス、取引形態、直接・間接の取引に係る国・地域、顧客属性等を漏れがないよう包括的に洗い出し、その上で、実務に即して具体的なリスク項目を特定するための検証を行うことが求められます。なお、NRA や本ガイドラインに加えて、自らのリスクの特定に有用と考えられる資料等(FATF の公表しているリスクベース・アプローチに関するガイダンス等)を参照してマネロン・テロ資金供与リスクを特定することは、リスク管理態勢を整備する上で有益であると考えられますので、NRA 及び本ガイドライン以外の資料等を追加で参照することを否定するものではありません。
金融庁
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リスクの「包括的かつ具体的な検証」とは、どのような方法で行えばいいのでしょうか。
「包括的かつ具体的な検証」の方法は、個々の金融機関等によって異なり得ますが、自らの提供している商品・サービス、取引形態、取引に係る国・地域、顧客の属性等について、漏れがないよう包括的に洗い出しを行う必要があります。その上で、項目として大まかで抽象性のあるものではなく、実務に即して具体的なリスク項目を特定するための検証を行うことが求められます。例えば、自ら提供している商品・サービスを特定する場合、「〇×普通預金」、「××定期預金」、「△△ドル建普通預金」、「〇〇建定期預金」など、提供している商品・サービス1つ1つについて検証し、リスクを特定する必要があります。同様に、顧客が利用する上で関係する全ての取引形態、取引に係る国・地域、顧客の属性等についても、1つ1つを、前記と同様の水準で検証して、リスクを特定する必要があります。なお、この検証作業に際しては、国によるリスク評価の結果、外国当局や業界団体等が行う分析等についても適切に勘案する必要があるほか、自ら届出を行った疑わしい取引の分析を含め、自ら直面するマネロン・テロ資金供与リスクの特性を考慮する必要があります。
金融庁
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例えば、NRA における「商品・サービスの危険度」の項目に記載のある商品・サービスを提供する者に対して、サービスを提供している場合、自らの直面するリスクを「包括的かつ具体的」に「検証」する場合の留意点について教えてください。
NRA における「商品・サービスの危険度」の項目に記載のある商品・サービスを提供する者に関する顧客属性としてのリスクの特定・評価について、NRA に記載されている商品・サービスを提供していることのみをもって一律に高リスクと判断することなく、NRA に記載の「商品・サービスの危険度」の記載のうち、「危険度の要因」、「危険度の低減措置」等の記載等や、実際の顧客の取引等を考慮して、リスクの特定・評価を行う必要があるものと考えます。また、こうした顧客の顧客リスク評価を行う場合には、当該顧客のビジネスモデルや取引内容を踏まえ、実施する必要があるものと考えます。
金融庁
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包括的かつ具体的な検証に当たっては「自らの営業地域の地理的特性」、「事業環境」や「経営戦略」を考慮するとありますが、具体的に何が求められているのでしょうか。
「自らの営業地域の地理的特性」については、当該地域の地理的な要素の特性を意味しています。例えば、自らの営業地域が、貿易が盛んな地域に所在するといった場合や、反社会的勢力による活発な活動が認められる場合、反社会的勢力の本拠が所在している場合に、当該地域のリスクに関する独自の特性を考慮する必要があると考えます。実際に地理的特性を考慮してリスクを検証する際には、例えば、貿易が盛んな地域に自らの営業地域が存在している場合、貿易や水産物等を取り扱うなどの取引先が多いと考えられますので、顧客の取扱商品や輸出・輸入先の把握を通じた経済制裁等への対応等、地域的特性から精緻に検証し、リスク項目を洗い出すことが必要になるものと考えます。「事業環境」については、マネロン・テロ資金供与に関する規制の状況、競合他社のマネロン・テロ資金供与対策の動向等、自らの事業に関する要素を考慮した上で、リスクを検証する必要があると考えます。例えば、競合他社が参入する場合(基本的には、自らの競合他社が参入する場合)には、新たな競合他社の参入により、競争の激化やサービスの変化、取引量の増減等によるマネロン・テロ資金供与の固有リスクが変化する可能性があります。したがって、例えば、新たな競合他社の参入により市場全体のマネロン・テロ資金供与に関するリスクが影響を受ける場合には、新たに検証すべきリスク項目がないかについて、年に1回程度予定されている定期的なリスク評価書の改訂を待つのではなく、可能な限り早い段階で洗い出す必要があると考えます。なお、顧客が海外との取引を行っている場合、その相手先の国・地域のマネロン・テロ資金供与リスクも踏まえた顧客リスク評価を行うことが求められています。「経営戦略」については、収益の倍増、新規顧客の獲得強化、海外の金融機関の買収等様々なものが考えられますが、自らが経営戦略上の重点分野として設定した事項について、当該経営戦略を推し進めた場合に、どのような形で自らの提供する商品・サービス等がマネロン・テロ資金供与に利用され得るかといったことを検証する必要があると考えます。
金融庁
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「取引に係る国・地域について検証を行うに当たっては(中略)直接・間接の取引可能性を検証し、リスクを把握すること」とありますが、間接の取引とは、どのような場合を指しているのでしょうか。
制裁対象国等ハイリスク国の周辺国・地域と取引を行う場合や、顧客が行う商 取引行為が制裁対象国等ハイリスク国・地域に関連している場合のほか、例えば、マネロン・テロ資金供与リスクが高いと評価される国・地域に向けた取引が、マ ネロン・テロ資金供与リスクが高いと評価されていない国・地域を経由して行わ れる場合等が考えられます。また、顧客の所在地が日本である場合においても、当該顧客が、制裁対象国等 ハイリスク国の周辺国・地域において子会社・合弁会社を設立している場合には、当該会社を通じて、経済制裁対象国へ資金が流出する可能性もあります。こうしたマネロン・テロ資金供与リスクについて、金融機関等は、当該顧客のリスク評価の一要素として、当該顧客の商流のみならず、当該顧客の子会社・合弁会社の実態等や必要に応じてその取引相手の実態等を把握することが考えられます。さらには、顧客がこれらの子会社等の実態を把握しているか、顧客が子会社等に牽制機能を有しているかといった点を十分把握することが考えられます。特に、制裁対象国等ハイリスク国の周辺国・地域に所在する子会社・合弁会社については、取引相手や取引の商品も含め、これらの点に留意する必要があると考えますが、いかなる範囲の子会社・合弁会社等について、いかなる方法により実態を把握するかは、各金融機関等において、リスクに応じて、個別具体的に判断していただくことが重要であると考えています。例えば、融資等の先はもちろんのこと、そうした先でなくとも、様々な情報等から、グローバルに業務を展開している可能性のあると判断される企業については、状況に応じて、制裁対象国等ハイリスク国の周辺国・地域に所在する子会社・合弁会社の存在や、子会社・合弁会社と制裁対象者等との取引の可能性を確認していくといったことが考えられます。
金融庁
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例えば、自社が貿易業者との取引を主な業務としている場合、当該貿易業者が取引先としている相手国のマネロン・テロ資金供与リスクまで考慮する必要はありますか。
顧客リスク評価において、顧客が海外との取引に関係する業務を行っている場合や海外で業務を行っている場合については、その顧客の業務に関係する 国・地域のマネロン・テロ資金供与リスクを勘案する必要があると考えます。
金融庁
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「提携先、連携先、委託先、買収先等のリスク管理態勢の有効性」を検証する際に留意すべき事項を教えてください。
金融機関等は、自らの業務・サービス等がマネロン・テロ資金供与に利用されないよう、リスク評価に基づきリスクベースで管理態勢を整備する義務を負います。こうした自らの提供する商品・サービスへの影響の視点から、リスクベースの管理の一環として、当該商品・サービスの提供に係る提携先、連携先、委託先、買収先等(以下「提携先等」といいます。)のリスク管理態勢の有効性も含めて、マネロン・テロ資金供与リスクを検証することが求められます。
金融庁
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「当該商品・サービス等の提供前に(中略)マネロン・テロ資金供与リスクを検証すること」について、留意すべき事項を教えてください。
これまで取扱いがなかった商品・サービス等の提供を開始する場合のほか、例えば、国内外の事業を買収することや業務提携等により、新たな商品・サービスの取扱いが発生する場合、直面するリスクが変化することから、営業部門と管理部門とが連携して、事前にマネロン・テロ資金供与リスクを分析・検証することが求められます。これまで取扱いがなかった商品・サービス等の提供を開始する場合として、例えば、金融機関等が顧客に対して法人口座に紐づく入金専用の仮想口座(バーチャル口座)等を提供することを検討している場合に、仮想口座を利用する事業者等の利用目的等を踏まえ、マネロン・テロ資金供与リスクを検証することが考えられます。なお、顧客が仮想口座を介して実質的に第三者の資金を移転させるような場合には、当該利用状況を踏まえたリスク低減措置を講ずることが必要となるものと考えます。また、他業態の事業者と提携して新たな商品・サービスを提供する場合に、例えば、当該他業態の事業者の取引時確認の結果に依拠する場合には、当該他の事業者のマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の有効性を確認することが必要となるものと考えます。さらに、提携先等これらの実質的支配者を含む必要な関係者を確認し、反社会的勢力でないか、あるいは制裁対象者でないかといったことを検証することが必要となるものと考えます。このほか、提携先等がどのようなマネロン・テロ資金供与リスクに直面し、その提携等している業務のリスクに対して、どのようなマネロン・テロ資金供与リスク管理を行っているかを把握し、リスクに応じて継続的にモニタリングすることが考えられます。また、新たな商品・サービス等の提供後に、当該商品・サービス等の内容の変更等により、事前に分析・検証したものと異なるリスクを検知した場合には、リスクの見直しを行った上で、見直し後のリスクを低減させるための措置を講ずる必要があります。当然ながら、提携先等と連携して提供する業務が特定業務(犯収法別表及び同法施行令第6条)に該当する場合には、特定業務に係る取引を行った場合の取引記録等の作成・保存、疑わしい取引の届出を行う義務があり、加えて、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出の措置を的確に実施するための態勢整備を行う必要があります(犯収法第 11 条、同法施行規則第 32 条第1項各号参照。)。
金融庁
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「マネロン・テロ資金供与リスクについて、経営陣が、主導性を発揮して関係する全ての部門の連携・協働を確保した上で、リスクの包括的かつ具体的な検証を行うこと」とは、具体的に経営陣にどのような対応を求めているのでしょうか。
マネロン・テロ資金供与リスクの特定段階で、経営陣に求められている対応としては、①組織全体で連携・協働してマネロン・テロ資金供与リスクを特定するための枠組みの確保、②経営レベルでの各部門の利害調整、③円滑かつ実効的にマネロン・テロ資金供与リスクの特定を実施するための指導・支援を行うとともに、④それらを可能とする経営資源の配分に関する機関決定を主導的に実施することが必要であると考えます。
金融庁
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【Q2リスクを特定するための包括的かつ具体的な検証における、第1線及び第2線の連携・協働の方法に関する留意点を教えてください。
第1線の職員は、顧客の取引先や顧客の商流等の情報、商品・サービスの利用実態等に精通していると考えられるため、実務に即して具体的にリスク項目を特定するためには、商品・サービスや顧客等の実態をよく把握している第1線が保有している情報を活用することが必要であると考えられます。その方法としては、第2線において、商品・サービスの性質や、顧客の属性等、リスクの特定のために必要な情報(非対面性、外国との取引が見込まれるか、現金の受入の有無、蓄財性、高リスク顧客の利用が見込まれるかなど)を整理した上で、該当する性質が、各商品・サービスや顧客に妥当するか否かなどを 、第 1線が精査した上で第2線に還元する方法や、第1線において自らが取り扱う商品・サービスや顧客属性等の情報を整理した上で第2線に提供する方法が考えられます。なお、これらの役割分担の前提条件として、第2線は、第1線に対して、マネロン・テロ資金供与リスクの特定の方法について、商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客属性等に即した適切な研修等を実施し、第1線がリスクの特定をはじめとするリスクベースのマネロン・テロ資金供与リスク管理手法を理解している必要があると考えます。
金融庁
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「リスクの把握の鍵となる主要な指標を特定」とありますが、具体的な指標の例を教えてください。例えば、外為送金の取引件数や非対面による取引件数、非居住者の取引件数、疑わしい取引の届出件数等は該当しますか。
リスクの特定・評価に係る主要な指標には、ご指摘の指標も含まれ得るところ、具体的にいかなる指標を用いて、定量的な分析を行うかについては、各金融機関 等の事業環境・経営戦略・リスク特性等を踏まえて、判断されることとなります。報告徴求命令で年に1回報告していただいている計数は継続的に報告する項目であるため、これらの項目のいくつかの項目や他の指標がリスクの把握の鍵となる主要な指標となるか、金融機関等ごとに判断していただくのが望ましいものと考えます。
金融庁
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「具体的かつ客観的な根拠に基づき(中略)評価を実施」や「リスク評価の結果を文書化」について、留意すべき事項を教えてください。
「具体的かつ客観的な根拠に基づき(中略)評価を実施」する場合については、具体的かつ客観的な実際の取引分析や評価、顧客属性、疑わしい取引の届出の内容や傾向、自らの金融犯罪被害の状況や手口の分析等を踏まえた評価とすることなどが考えられます。こうした評価をするに当たっては、例えば、取引量(金額、取引件数等)・影響の発生率・影響度等の検証結果や、自らの事業環境・経営戦略・リスク特性等を踏まえる必要があると考えます。なお、「影響の発生率」とは、有形無形の損失が発生する可能性の程度を示しています。また、「影響度」は、想定される有形無形の損失の大小等を指します。「有形無形の損失」の例としては、内外の当局による行政処分や制裁、コルレス関係解消、レピュテーションリスク等が含まれるものと考えます。以上のような要素をどのように考慮し、どのように評価を行うかなどについては、各金融機関等において、事前に文書化しておく必要があると考えます。NRA 等の国によるリスク評価や業界団体によるリスク評価、分析レポート、 FATF によるリスク評価(注)といった評価手法を踏まえ、これらに含まれる業界、国におけるリスク認識とも整合性が取れるかといった点も考慮することが考えられます。また、以上の分析を踏まえたリスク評価の結果を文書化する必要があり、「リ スク評価の結果を文書化」することとは、このような文書化の作業を意味します。「リスク評価の結果を文書化する」過程においては、講じられているリスク低減措置(類型毎のリスク評価結果等に基づいた具体的な措置の詳細等)や、随時・定期的な有効性検証の実施内容及び評価等について記載することが求められます。(注) FATF が 公 表 し て い る メ ソ ド ロ ジ ー ( Methodology )、 勧 告(Recommendations)、解釈ノート(Interpretive Notes)、セクターごとのガイダンス(Guidance)、行動要請対象の高リスク国・地域(High-Risk Jurisdictions subject to a Call for Action)、強化モニタリング対象国・地域(Jurisdictions under Increased Monitoring)、内外の当局の経済制裁に関する情報等
金融庁
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リスク評価における営業部門との具体的な連携方法について、具体的な留意点があれば教えてください。
リスク評価は、金融機関等が保有するマネロン・テロ資金供与リスクを正確に把握することであり、マネロン・テロ資金供与リスク管理の主管部署である第2線のみで、実態に即さないリスクの評価を行うことは避けるべきであると考えられます。具体的には、第1線と第2線がリスクの評価の作業を行う段階で緊密に連携し、顧客や商品・サービスの実態を最も理解している営業部門が保有している顧客の取引先や顧客の商流等の情報、商品・サービス、取引形態等のリスクを顧客リスク評価に反映させるなど、営業部門がこれまでに築いてきた顧客との信頼関係を基礎として把握した情報を全てリスク評価の過程で反映することが必要と考えます。管理部門(第2線)は、営業部門(第1線)がリスク評価を実施するに当たって考慮すべき事情を明確に理解することができるよう、リスク評価の全社的方針や具体的手法を確立する必要があります。また、管理部門(第2線)は、営業部門(第1線)の行ったリスク評価を踏まえつつ、疑わしい取引の分析結果等を勘案しながら、最終的なリスク評価を実施する必要があります。なお、これらの連携の前提条件として、第2線は、第1線に対して、マネロン・テロ資金供与リスクの評価の方法について、商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客属性等に即した適切な研修等を実施し、第1線がリスクの評価をはじめとするリスクベースのマネロン・テロ資金供与リスク管理手法を理解している必要があると考えます。
金融庁
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「疑わしい取引の届出の状況等」の「等」について、具体的な内容を教えてください。
例えば、自らの口座の不正利用状況や、捜査機関等からの外部照会の状況を分 析するほか、特殊詐欺等の金融犯罪が発生している場合に、警察からの凍結要請、顧客の申告状況、顧客に関する報道等の公知情報等から、その手口や被害状況等 を分析して、リスクの評価に活用することが考えられます。
金融庁
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疑わしい取引の届出はどのように分析することが求められるのでしょうか。また、届出件数が少数である場合における分析、検証は、どのように行うことが求められるのでしょうか。
疑わしい取引の届出の分析として、疑わしい取引の届出を実施した顧客の顧客リスク評価を見直すのみならず、届出をした疑わしい取引に関して、商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客属性、届出理由、発覚経緯等といった要素に着目し整理を行った上で、自らの行っているリスクの特定、評価、低減措置、顧客リスク評価の見直しに活用することが求められます。例えば、取引モニタリングの敷居値を設定する際に、疑わしい取引の届出状況を分析した結果を踏まえ、一定の顧客属性や取引パターンについては、そのリスク評価を見直し、リスクが高くなる場合はリスクに応じて敷居値を下げることにより通常より検知感度を上げることなどが考えられます。疑わしい取引の届出がある場合には、当該届出を分析することで、金融機関等におけるリスク評価の精度の向上等に活用することを求めたものであり、たとえ届出件数が少数であっても、例えば、届出の理由等が他の取引等(当該顧客との取引や、他の顧客との同種取引も含みますがこれに限りません。)にも妥当する可能性がある場合には、過去において類似事案が発生していないかを確認し、本来届け出るべきものを検証するなどして当該取引に係る疑わしさの調査や届出判断の手続を見直すと共に検証の結果をリスク評価に反映し、より実効的な対応ができるよう改善することなどが考えられます。なお、サンプルチェック等の結果、疑わしい取引の参考事例等に該当するにもかかわらず届出が行われていない取引が一定数認められた場合等には、本来届出を行うべき取引が検知されない、又は検知されたものの提出に至っていない可能性があるため、このような場合には、疑わしい取引の届出を行うための態勢について、第3線が検証を行うこともあり得ます。
金融庁
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「定期的にリスク評価を見直す」とありますが、「定期的」の目安は1年に1度程度と考えて良いでしょうか。
定期的な見直しについては、少なくとも1年に1回は見直しを検討することが必要であるほか、新たなリスクが生じたり、新たな規制が導入されたりするなど、商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客属性等のリスクが変化した場合等に、随時見直すことが考えられます。また、定期的に見直す場合にはその時期や期間、随時に見直す場合にはその見直しが必要となる状況等を、事前に検討して文書化しておくことで、より実効性が確保されるものと考えます。なお、顧客リスク評価についても、リスクに応じた頻度で定期的に見直すとともに、顧客のリスク評価に影響を及ぼすような事象が発生した場合には、直ちに見直しを行う必要がありますので、当該事象の検知方法、判断基準、手続等を事前に文書化し、第1線を含む関係部署に周知徹底しておくことが必要と考えます。
金融庁
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「リスク評価の過程に経営陣が関与し」とありますが、具体的にどのような事項に対して、どこまで経営陣が関与すべきなのか、対応例等を教えてください。
マネロン・テロ資金供与リスクの評価段階で、経営陣に求められている対応としては、①組織全体で連携・協働してマネロン・テロ資金供与リスクを評価するための枠組みの確保、②経営レベルでの各部門の利害調整、③円滑かつ実効的にマネロン・テロ資金供与リスクの評価を実施するための指導・支援を行うとともに、④それらを可能とする経営資源の配分に関する機関決定を主導的に実施するであると考えます。対応例としては、マネロン・テロ資金供与対策に係る責任を担う役員が、評価手法の検討・実施について承認し、リスク評価のプロセスが適切に行われるよう態勢を整備した上で確認を行い、必要に応じて、遅滞なくこれらの評価手法やその実施態勢について改善を図り、経営陣が、リスク評価の過程で、担当部署から随時報告を受け、リスク評価の結果について議論の上承認を行い、最終的なリスク評価を確定させる対応が考えられます。
金融庁
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全社的リスク評価の結果を「見える化」する意義は、どのようなところにあるのでしょうか。
本ガイドラインⅡ-2(2)【対応が期待される事項】a.は、自らが提供して いる商品・サービスや、取引形態、取引に係る国・地域、顧客属性等が多岐にわ たる場合において、これらに係るリスクを細分化し、当該細分類ごとにリスク評 価を行う場合を想定しています。さらに、これら評価結果を総合して、全社的リ スク評価の結果を文書化し、経営陣や業務執行部内にも分かりやすく「見える化」することにより、全社的な理解と取組みを促進することが考えられます。
金融庁
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「個々の顧客・取引の内容等を調査」する場合において、留意すべき事項を教えてください。
「個々の顧客・取引の内容等を調査」する方法としては、様々なものが考えられます。例えば、個々の顧客が利用する商品・サービスの内容や取引の状況を検証し、個々の顧客に対して、申告を求めたり、リスクに応じて信頼に足る証跡を求めたりするほか、個々の顧客に接触しなくとも、顧客に関する不芳情報(ネガティブ・ニュース)を取得したり、当該不芳情報が当該顧客のリスク評価に影響を与える場合、その背景・実態を追加調査したり、顧客の取引の内容について、過去の取引の態様、職業や取引目的等との整合性を確認したりするなどが考えられます。いずれにせよ、「個々の顧客・取引の内容等を調査」する方法については、対象となる顧客や取引の特性等に応じて、個別具体的に判断することになります。
金融庁
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「個々の顧客・取引の内容等」の調査「結果を当該リスクの評価結果と照らして」に関して、留意すべき事項を教えてください。
まず、自らが保有している顧客や取引の内容等の情報を基に、仮の顧客リスク評価を実施した上、さらに、最新の顧客や取引の内容等の情報を考慮することにより、顧客リスク評価を最新にすることが必要です。顧客リスク評価を適切に実施することにより、適切なリスク低減措置を判断・実施することができるものと考えています。
金融庁
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「講ずべき実効的な低減措置を判断・実施すること」について、留意すべき事項やどのような対応が考えられるかを教えてください。
講ずべき実効的な低減措置については、マネロン・テロ資金供与リスクの低減のみを目的とする措置の有効性のほか、他の目的のために従前より実施していた各種取組みの副次的な効果も踏まえ、総合的に判断・実施することが求められます。例えば、預金口座開設時の取引時確認は、適切な本人確認手続を通じてなりす ましを防ぐためのリスク低減措置として有効であるとともに、その際に、顧客リ スク評価を実施すること、リスクに応じて追加的に行うヒアリング項目をあら かじめ定めておくこと、厳格な取引時確認の手続を文書化し周知徹底しておく ことも取引開始時におけるリスク低減措置と考えられます。取引開始後におい ても、顧客リスク評価に応じた頻度及び顧客のリスクが高まったと想定される 具体的な事象が発生した際にリスク評価を見直すこと、リスクに応じた取引モ ニタリングの敷居値を設定・変更することも有効なリスク低減措置です。さらに、顧客に事情等を十分に確認した上で、例えば、合理的な説明がなく居住地と勤務 先のいずれからも遠方の支店に口座の開設を要請された場合、追加的な説明を 求めるとともに、必要に応じて総合的に判断し、契約自由の原則に基づき、それ を認めない、あるいは留保することもリスク低減措置の1つと考えられます。な お、リスク低減措置を検討する場合には、業務実態に即して、必要な対応を実施 することが重要であると考えます。
金融庁
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インターネットバンキングについて、マネロン・テロ資金供与リスク評価、低減措置の観点から留意すべき事項を教えてください。
インターネットバンキングについては、乗っ取り、なりすましや取引時確認事項の偽りの可能性があることなど、非対面取引のリスクを踏まえた対応が必要であり、例えば、IP アドレスやブラウザ言語、時差設定等の情報、User Agentの組み合わせ情報(例えば、OS/ブラウザの組み合わせ情報)等の端末情報や画像解析度等を活用することにより、不審・不自然なアクセスを検知するといった対応が考えられます。
金融庁
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輸出入代金等の代り金決済、総合振込や給与振込について、マネロン・テロ資金供与リスク評価、低減措置の観点から留意すべき事項を教えてください。
代り金決済や総合振込・給与振込は、予約記帳によって、取引実行日に自動的に振込や送金が行われることから、代り金決済において代り金が未着の場合や総合振込・給与振込において残高が不足する場合における取引の実施等についての判断に当たっては、与信面の分析のみならず、受付時において取引の内容に関するマネロン・テロ資金供与リスクも勘案しつつ判断することが必要であると考えられます。例えば、当該顧客の取引担当者がなりすましを行っていないか、口座情報が詐取されていないかなどの観点から、確認を行うことが必要であると考えられます。そのほか、合理的な説明なく、今までの総合振込、給与振込先とは異なる複数の先に送金の申込みがある場合や、事業内容には関係のない海外の送金先が含まれている場合等については、リスクに応じた対応が必要と考えます。
金融庁
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「個々の顧客やその行う取引のリスクの大きさに応じて、自らの方針・手続・計画等に従い、マネロン・テロ資金供与リスクが高い場合にはより厳格な低減措置を講ずること」とは具体的にどのような対応が求められているのでしょうか。
事前に策定していたマネロン・テロ資金供与リスクに対する方針・手続・計画等において、リスクの高い顧客に対するリスクに応じた具体的な対応策、具体的な対応策を講ずるタイミング、実施権限者、実施プロセス、実施部署等を定め、当該方針・手続・計画等に従い、個々の顧客に対する顧客リスク評価やリスクに応じた取引モニタリング等のリスクに応じた適切なリスク低減措置を実施することを求めています。例えば、マネロン・テロ資金供与リスクが高いと認められる場合には、送金目的や送金原資について、通常のヒアリングによる判断に加えて、追加的な証跡を求めて判断するといったリスクに応じた厳格な低減措置をあらかじめ文書化しておくなどの対応が考えられます。
金融庁
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「本ガイドライン記載事項のほか、業界団体等を通じて共有される事例や内外の当局等からの情報等を参照しつつ、自らの直面するリスクに見合った低減措置を講ずること」とは、具体的にどのような対応が求められているのでしょうか。
より幅広い情報収集を実施することで、より効果的なリスク低減措置を講ずることが可能となります。そこで、各金融機関等は、NRA や本ガイドラインのみならず、業界団体、内外の当局等から公表されるマネロン・テロ資金供与リスクに係る公表物等を確認し、その内容から、自らが直面するリスクに見合った低減措置に至る可能性がある情報等を収集し、自らに適したリスク低減措置を講ずることが求められていると考えます。
金融庁
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「顧客の受入れに関する方針」の策定が求められていますが、これは、「顧客の受入れに関する方針」と題するマニュアル等の策定を求めるものではなく、リスク評価に基づく顧客の受入れ方針について社内の何らかのマニュアル等に定めていれば良いという理解で良いでしょうか。
本ガイドラインⅡ-2(3)(ⅱ)【対応が求められる事項】①については、「顧客の受入れに関する方針」と題する文書等の作成を機械的に求めるものではなく、当該金融機関等の顧客受入れ方針と手続を明確に定め、規程化し、特に第1線の職員に周知徹底していることを求める趣旨です。なお、各金融機関等における規程体系については、各金融機関等において判断すべきものと考えています。
金融庁
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「顧客の受入れに関する方針」には、どのような内容が盛り込まれる必要があるのでしょうか。
自らが行ったリスクの特定・評価に基づいて、リスクが高いと思われる顧客・取引及び顧客に求める対応について、明確に判断するに足りる内容が記載されている必要があると考えます。そのほか、謝絶や取引制限をする場合の適切な決裁権限等といった内容が盛り込まれている必要があると考えます。
金融庁
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いわゆる一見顧客への「受入」における留意点について教えてください。
いわゆる一見顧客への対応については、①法令等の対応を適切に実施する、②リスクベースの対応を適切に実施する、③顧客説明を丁寧に実施するという3点が重要と考えます。①については、犯収法等の法令等で求められている義務を確実に履行することが求められます。②については、商品・サービス、取引形態、取引に係る国・地域、顧客属性等のリスクを包括的かつ具体的に検証して得られたリスク評価及びその低減措置を、当該一見顧客の取引に適用し、事前に定められている低減措置を確実に実施することが求められます。①及び②に関しては、法令に従った取引時確認等を実施した上、氏名、生年月日、住所等を確認した結果、反社会的勢力や制裁対象者に該当することが分かった場合には、契約自由の原則と社内規定、法令等に沿って、謝絶した上で、疑わしい取引の届出を行うなどの適切な対応が求められます。また、スクリーニングの結果、反社会的勢力や制裁対象者に該当する可能性がある場合には、上級管理職との協議を行い、取扱いの可否を判断し、疑わしい取引の届出を行うと共に、他拠点で同一顧客が一見取引を行った際にチェックできるような態勢を構築することが想定されます。加えて、例えば、一見顧客が A 支店で取引を行おうとした結果、反社会的勢力等、取引不可先であることが判明した場合には、当該一見顧客が B 支店等他の支店等において取引を実施しようとした場合においては、当該他の支店等においても取引を適切に謝絶できるといった態勢を構築することが求められます。そして、③については、一見顧客は、これまで取引等がないことから、情報等も少なく、①及び②の手続に時間を要することが想定されますので、各種手続の内容や手続に要する時間等を顧客に対して丁寧に説明し、当該顧客に納得してもらうことも重要であると考えます。なお、丁寧に説明をしても納得が得られないなど協力が得られない場合、又は合理的な理由なく申告された取引目的とは異なるような高額取引や把握された属性から外れるような取引が認められた場合には、内部規程に従って、上級管理職の判断を求めることも必要であると考えます。
金融庁
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実質的支配者の定義は、犯収法における実質的支配者と同様という理解で良いでしょうか。
そのような理解で差し支えありませんが、その確認方法については、顧客リスク評価の結果を踏まえ、申告に加えて、実質的支配者に該当する証跡を求めるなど、最低基準である法令対応事項を超えた対応を実施することを妨げるものではないと考えます。
金融庁
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「顧客の受入れに関する方針の策定に当たっては、顧客及びその実質的支配者の職業・事業内容のほか、例えば、経歴、資産・収入の状況や資金源、(中略)顧客に関する様々な情報を勘案すること」とありますが、実質的支配者の職業・事業内容を含め、これらはあくまで例示であり、これらの例示を踏まえて、各金融機関等は、規模・業容等に応じた顧客の受入れに関する方針を策定するという理解で良いでしょうか。
本ガイドラインⅡ-2(3)(ⅱ)【対応が求められる事項】②に掲げた各項目の記載はいずれも例示であり、あらゆる顧客や実質的支配者に対して、一律に各項目を確認・勘案等することを求める趣旨ではありません。いずれにせよ、顧客及び実質的支配者について、何を、いかなる方法で確認・勘案等すべきかについては、単一の法令・ガイドライン等で求められる最低水準を画一的に全ての顧客に当てはめるのではなく、顧客リスク評価に基づき、リスクが高い場合についてはより深く、証跡を求めて確認を行うなど、リスクに応じた対応を図るべきと考えられます。
金融庁
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顧客の「実質的支配者」の「本人確認事項」の「調査」に関して留意すべき事項を教えてください。
Ⅱ-2(3)(ⅱ)顧客管理(カスタマー・デュー・ディリジェンス:CDD)柱書にも記載しているとおり、金融機関等が顧客と取引を行うに当たっては、実質的支配者が誰かということをはじめとする基本的な情報を調査し、講ずべき低減措置を判断・実施することが必要不可欠です。そのため、取引開始時のみならず、継続的顧客管理の中でも、リスクに応じて適切に顧客の実質的支配者の本人確認事項を確認することが求められます。
金融庁
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調査に当たり信頼に足る証跡を求めている「本人確認事項」は、犯収法上の「本人特定事項」と同義でしょうか。
本ガイドラインにおける「本人確認事項」については、犯収法上の「本人特定 事項」のほか、例えば、顧客及びその実質的支配者の職業・事業内容、経歴、資 産・収入の状況や資金源、居住国等が含まれ得るより広い概念です。あらゆる顧 客や実質的支配者に対して、一律に各項目を確認・勘案等することを求める趣旨 ではありませんが、リスクに応じてどの項目を確認・勘案等するのかについては、事前に検討して文書化しておくことで、実効性を確保することが考えられます。
金融庁
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「信頼に足る証跡」とは、具体的にはどのようなものが該当するのでしょうか。例えば、本人確認事項の調査において、犯収法施行規則第7条に定める本人確認書類が該当するとの理解で良いでしょうか。
「信頼に足る証跡」は申告の真正性を裏付ける公的な資料又はこれに準じる資料を意味しています。本人確認事項の調査に当たっては、犯収法施行規則第7条に定める本人確認書類のほか、経歴や資産・収入等を証明するための書類等が考えられますが、調査する事項に応じ、その他の書類等についても活用することが考えられます。例えば、株主名簿、有価証券報告書、法人税確定申告書の別表等を徴求することや公証人の定款認証における実質的支配者となるべき者の申告制度(注1)や実質的支配者リスト制度(注2)を活用することなども考えられます。具体例としては、生命保険金の支払時において、受取人が団体である場合には、株主名簿や有価証券報告書等の証跡を取得するなどにより、その実質的支配者の調査を実施することが考えられます。ただし、信頼に足る証跡を求める場合には、必要に応じて複数の資料を検証することが必要であるものと考えます。 また、取引目的の調査に当たっては、例えば、取引目的が商取引であれば、取 引先との取引履歴や、同取引に関する契約書等を徴求することが考えられます。なお、犯収法令上定められた項目については、犯収法令上定められた方法、書類に従い確認を行った上で、リスクに応じて、追加的に証跡を取得することについて判断することとなります。(注1) 法人設立時の定款認証において、公証人に実質的支配者となるべき者を申告させる制度のこと(2018 年 11 月 30 日に改正公証人法施行規則の施行により開始)。(注2) 登記所が株式会社からの申出によりその実質的支配者に関する情報を記載した書面を保管しその写しを交付する制度のことを指します(2022 年1月 31 日に商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則の施行により開始)。
金融庁
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顧客及びその実質的支配者の本人確認事項、取引目的等の調査に当たっては、「信頼に足る証跡を求めてこれを行うこと」とありますが、法令上求められていない場合であっても、顧客の申告にとどまらず、一律に証跡を求めることが必要という趣旨でしょうか。
顧客及びその実質的支配者の本人確認事項、取引目的等の調査において、「信頼に足る証跡」を求めているのは、顧客の申告の真正性等にも留意しながら必要な証跡を求める趣旨です。したがって、あらゆる確認事項について一律に書類等の証跡を求めるものではなく、リスクに応じて、顧客の申告内容の真正性を基礎付ける証跡を求めることが必要となるものと考えます。ただし、このような対応を場当たり的に実施するのではなく、事前に基準や方針等を文書化しておくことで、実効性を確保することも必要と考えます。また、犯収法令上定められた項目については、犯収法令上定められた方法、書類に従い確認を行った上で、リスクに応じて、追加的に証跡を取得することについて判断することとなります。
金融庁
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「国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じて必要な措置を講ずること」について、留意すべき事項を教えてください。
国内外の制裁に係る法規制等の遵守については、例えば、国際連合安全保障理事会(以下「国連安保理」といいます。)決議等で指定される経済制裁対象者については、外国為替及び外国貿易法第 16 条及び第 21 条等に基づき、同決議等を踏まえた外務省告示が発出された場合に、直ちに該当する経済制裁対象者との取引がないことを確認し、取引がある場合には資産凍結等の措置を講ずるものとされています。さらに、国際的な基準等(注)を踏まえると、外務省告示の発出前においても、国連安保理決議で経済制裁対象者が追加されたり、同対象者の情報が変更されたりした場合には、遅滞なく自らの制裁リストを更新して顧客等の氏名等と照合するとともに、制裁リストに該当する顧客等が認められる場合には、より厳格な顧客管理を行い、同名異人か本人かを見極めるなどの適切かつ慎重な対応が必要と考えています。さらに、国連安保理における決議を経ることなく、特定の国・地域から特定の国・地域に対して経済制裁が行われることもあり得るため、取引に関係する者や物品・サービスが特定の国・地域の制裁対象に関係していないか、慎重な確認が必要となる場合もあることに留意が必要であるものと考えます。したがって、このような対応を確実に実施するために必要なデータベースやシステム等の整備、人材の確保、資金の手当てを、直面しているリスクに応じて実施していただくことが重要であると考えています。なお、昨今、データ復旧等に身代金を要求するランサムウェアの感染被害が報告されています。海外ではランサムウェアの身代金がテロ資金等に悪用される可能性もあると指摘されており、米国においては、金融機関等に向けて、ランサムウェアの身代金の支払いへの関与には制裁リスクがあるという点について注意喚起の勧告も出されました。サイバー空間には国境がないことから、このような身代金の支払いに金融機関等が利用されてはならず、顧客の送金について、この種のテロ資金供与リスクがあることも留意する必要があります。(注)FATF においては、テロ資金供与や大量破壊兵器の拡散に関する金融制裁として、国連安保理により制裁対象として指定された個人・団体が保有する資金・資産を遅滞なく凍結することを求めております。
金融庁
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「信頼性の高いデータベースやシステムを導入するなど」とありますが、ベンダーが一般的に提供している PEPs リストのデータベースや AML システムの導入等を念頭に置いているとの理解で良いでしょうか。
ご指摘いただいた外部機関等が提供している信頼に足る PEPs リストも含む、国連安保理指定の制裁対象者・国・団体、取引に関係する国・地域の制裁対象者や我が国の反社会的勢力を含むデータベース、マネロン・テロ資金供与対策に係るシステムも一例として考えられます。その際は、遅滞なくデータの更新が行われることに加え、取引フィルタリングシステムのリストやあいまい検索機能や取引モニタリングシステムのシナリオ・敷居値等をリスクに応じた適切なものとする必要があると考えられます。
金融庁
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「リスクが高い顧客を的確に検知する枠組みを構築すること」とありますが、「リスクが高い顧客」には、外国 PEPs は含まれますか。
一般的に、外国 PEPs は、汚職等を敢行する潜在的なおそれがあることから、高リスク顧客の中に含まれて管理されているものと考えられます。そこで、金融機関等は、適切に外国 PEPs を検知できる枠組みの整備が必要となりますが、具体的な高リスク顧客の範囲や検知の方法等については、各金融機関等において、その業務特性等に応じて、個別具体的に決定し、必要に応じて適切に対応することが必要と考えられます。なお、外国 PEPs については、その地位や職務等を勘案して、リスク評価を行う必要があり、離職している場合には、年数にかかわらず離職後の経過期間も考慮することが、よりきめ細かい継続的顧客管理の実施に資することになります。
金融庁
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「全ての顧客について顧客リスク評価を行う」とは、取引開始時点で当該顧客のリスク評価を行うことも求められているのでしょうか。
取引開始時点においても、単に取引の可否や本部協議の要否を判断するだけでなく、継続的顧客管理のために必要な顧客リスク評価を行うことが求められます。
金融庁
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「全ての顧客について顧客リスク評価を行う」手法は、どのようなものがあるのでしょうか。
顧客リスク評価とは、商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客属性等に対する自らのマネロン・テロ資金供与リスクの評価結果を踏まえて実施する全ての顧客に対するリスク評価を意味しています。本ガイドラインは、金融機関等に対し、全ての顧客の顧客リスク評価を行うことを求めていますが、その手法については、金融機関等の規模・特性や業務実態等を踏まえて様々な方法があり得ます。例えば、利用する商品・サービスや顧客属性等が共通する「顧客類型ごと」にリスク評価を行うことや、「顧客類型ごと」ではなく、個別の「顧客ごと」にリスクを評価することが考えられます。なお、令和3年2月 19 日改正前のガイドラインにおいては、【対応が求められる事項】の例示として「顧客類型ごと」の方法、また、【対応が期待される事項】の例示として「顧客ごと」の方法を例示していましたが、今回の改正(令和 3年2月 19 日改正)において、これらの例示を削除しており、顧客リスク評価の実施を求めることを【対応が求められる事項】として整理しています。
金融庁
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