Question
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「動産担保」が「一般担保」として取り扱われるためには、「客観性・合理性のある評価方法による評価が可能であり実際にもかかる評価を取得していること」とされていますが、どのようなことを具体的に想定しているのですか。
評価方法については、動産の性質等に応じ、様々な態様があると考えられますが、例えば、以下のような場合については、原則として、金融検査マニュアルの要件を満たしているものとして取り扱って差し支えありません。・売却予定先との間で、あらかじめ売買予約契約が締結されており、当該契約に定められた売買価格を基に評価を行っている場合・適切な市場の存在などにより価格が標準化されており、当該価格を基に評価を行っている場合・専門業者等への売却が一般的に行われており、当該業者等から収集した売却価格等に関する情報を基に評価を行っている場合・担保評価額の評価の精度が高いと認めるに足りる者から評価を取得している場合・金融機関自らが、地域特産品など特定の動産の評価に関するノウハウ等を蓄積し、これを基に評価方法を定め、当該方法により評価を行っている場合
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「動産担保」が「一般担保」として取り扱われるためには、「当該動産につき適切な換価手段が確保されていること」とされていますが、どのようなことを具体的に想定しているのですか。
換価手段については、動産の性質等に応じ、様々な態様があると考えられますが、例えば、以下のような場合については、原則として、金融検査マニュアルの要件を満たしているものとして取り扱って差し支えありません。・売却予定先との間で、あらかじめ売買予約契約が締結されている場合・適切な市場が存在し、かつ実際にも当該市場において売却することが可能であると考えられる場合・専門業者等への売却が一般的に行われており、かつ実際にも当該業者等に売却することが可能であると考えられる場合・「動産担保」に関係する団体や専門業者等との業務提携等により、信頼のおける売却ルートを通じて売却することが可能であると考えられる場合・金融機関自らが、地域特産品など特定の動産の換価に関するノウハウ等を蓄積し、当該ノウハウ等により、信頼のおける売却ルートを通じて売却することが可能であると考えられる場合
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
適切な換価手段が例示されていますが、債務者の協力を得て、債務者の通常の取引先に売却することを想定している場合についても、「適切な換価手段が確保されている」ものとして取り扱ってもよいですか。
1.適切な換価手段については、動産の性質等に応じ、様々な態様があると考えら れますが、債権回収の最大化を図る観点からは、一般的に、債務者の協力を得て、通常の取引先に売却することが最も有利な換価手段の一つであると考えられます。2.しかしながら、「一般担保」である以上、仮に債務者の協力を得ることができない場合であっても、「確実な換価」を図る観点から、適切な換価手段を確保しておくことが必要です。3.したがって、債務者の協力を得て、債務者の通常の取引先に売却することのみを想定しに例示されている換価手段等を想定していない場合については、原則として、「適切な換価手段が確保されている」ものとして取り扱うことはできません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「動産担保」が「一般担保」として取り扱われるためには、「担保権実行時の当該動産の適切な確保のための手続きが確立していること」とされていますが、どのようなことを具体的に想定しているのですか。
動産の適切な確保のための手続きについては、動産の性質等に応じ、様々な態様があると考えられますが、例えば、以下の全ての手続きが確立している場合については、原則として、金融検査マニュアルの要件を満たしているものとして取り扱って差し支えありません。・担保権実行時において当該動産を確保するための一般的な手続きに関する内部規程が策定されている場合(例えば、動産譲渡担保権の実行通知の手続き、動産担保の占有の確保の手続きなど)・担保権実行時において当該動産を確保するための具体的な手続きが、債務者ごとにあらかじめ策定されており、かつ実際にも当該手続きに基づいた当該動産の確保が可能であると考えられる場合
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
以上のほか、「動産担保」が「一般担保」として取り扱われるために、特に留意すべき事項はありますか。、
1.「動産担保」が「一般担保」として取り扱われるためには、「登記」や「債務者と取引先との契約書」などに基づき、・先行譲渡がないこと・動産の所有権が現に債務者にあることなど、動産を担保とするに当たっての前提条件の確認が必要です。2.また、「適切な管理及び評価の客観性・合理性が確保され、換価が確実であると客観的・合理的に見込まれる」ことが必要であることから、債務者から必要な 資料の提出を受けることなどの権利を、あらかじめ確保しておく必要があります。特に、在庫品を「一般担保」とする場合においては、債務者の財務データ等の社内管理体制や在庫品の保管・管理体制を把握するとともに、債務者から提出された資料等に基づき、債務者の状況等に応じ、・取引先(仕入先及び売却先)・取引先との取引内容及び取引条件・仕入代金の支払状況及び売却代金の入金状況・保管業者等への費用の支払状況・債務者の売上げや資金繰りの状況等を継続的にモニタリングする必要があります。(3)売掛金担保の一般担保要件
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「売掛金担保」が「一般担保」として取り扱われるためには、「対抗要件が適切に具備されていること」とされていますが、どのようなことを具体的に想定しているのですか。
1.「売掛金担保」の対抗要件については、原則として、以下のいずれかの手続きを行っていることを想定しています。・「民法」に基づく「確定日付のある証書による通知又は承諾」・「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」に基づく「債権譲渡登記に加えて、登記事項証明書の交付を伴う通知又は承諾」2.なお、上記の手続きを行っていない場合については、原則として「一般担保」として取り扱うことはできませんが、法人債務者については、・当該債務者への風評の悪化を惹起するおそれがあるなど手続きを行っていないことに合理的な理由が存在する一方で、・手続きに必要な書類が全て整っており、かつ、直ちに手続きを行うことが可能な状態となっているものについては、少なくとも「債権譲渡登記」を行っていれば、「一般担保」として取り扱って差し支えありません。(注)「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」においては、「債権譲渡登記」は、「法人」が債権を譲渡した場合のみが対象であり、「個人」が債権を譲渡した場合は対象となっていません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「法人債務者については、当該債務者への風評の悪化を惹起するおそれがあるなど手続きを行っていないことに合理的な理由が存在する一方で、手続きに必要な書類が全て整っており、かつ、直ちに手続きを行うことが可能な状態となっているものについては、少なくとも『債権譲渡登記』を行っていれば、『一般担保』として取り扱って差し支えありません」とされていますが、手続きに必要な書類として、あらかじめ「登記事項証明書」を取得しておく必要があるのですか。
1.「売掛金担保」について、第三債務者及び第三債務者以外の第三者対抗要件を、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」に基づき具備するためには、「債権譲渡登記に加えて、登記事項証明書の交付を伴う通知又は承諾」が必要です。、2.したがって、直ちに上記の手続きを行うためには、あらかじめ「登記事項証明書」を取得しておくことが望ましいと考えられますが、例えば、第三債務者が多数にのぼる「売掛金担保」などについては、第三債務者の数の分だけ「登記事項証明書」を取得する必要があり、費用等の面から、こうした対応が実務上困難なケースもあると考えられるため、直ちに「登記事項証明書」を取得するための準備が整っていれば、必ずしも、あらかじめ「登記事項証明書」を取得しておかなくても差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「売掛金担保」が「一般担保」として取り扱われるためには、「第三債務者(目的債権の債務者)について信用力を判断するために必要となる情報を随時入手できること」とされていますが、自行(金庫・組合)と取引関係がない者を第三債務者とする「売掛金担保」については、当該第三債務者に関する情報を十分に入手できないことも想定されます。具体的にどのように情報を入手できればよいですか。
1.自行(金庫・組合)と取引関係がない者を第三債務者とする「売掛金担保」についても、可能な限り、当該第三債務者の信用力を判断するために必要となる情報を入手する必要があります。2.情報の入手については、第三債務者の状況等に応じ、様々な態様があると考えられますが、例えば、以下の全ての要件を満たしている場合については、原則として、金融検査マニュアルの要件を満たしているものとして取り扱って差し支え、ありません。、・債務者と第三債務者との取引状況等について、債務者から情報を随時入手できること・第三債務者の信用情報について、信用調査機関から情報を随時入手できること・信用格付業者の格付や公開されている決算情報等がある場合においては、これらを随時入手できること
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「売掛金担保」が「一般担保」として取り扱われるためには、「第三債務者の財務状況が継続的にモニタリングされていること」とされていますが、自行(金庫・組合)と取引関係がない者を第三債務者とする「売掛金担保」については、当該第三債務者に関する情報を十分に入手できないことも想定されます。具体的にどのような事項を継続的にモニタリングすればよいですか。
動産のモニタリングについては、動産の性質等に応じ、様々な態様があると考えられますが、例えば、以下のような場合については、原則として、金融検査マニュアルの要件を満たしているものとして取り扱って差し支えありません。 (1)在庫品を担保とする場合 在庫品については、数量や品質等が変動することなどから、債務者から提出された資料等に基づき、原則として、以下の全ての事項を継続的にモニタリングしていること。・在庫品の保管場所・品目別の仕入数量及び金額・品目別の売上数量及び金額・品目別の在庫数量及び金額モニタリングに当たっては、定期的に在庫品の数量及び品質等を実地に確認していること。 (2)機械設備を担保とする場合 機械設備については、担保価値が使用状況等に大きく依存するものと考えられることなどから、債務者から提出された資料等に基づき、原則として、以下の全ての事項を継続的にモニタリングしていること。・機械設備の設置・保管場所・機械設備の作業予定・機械設備の作業実績モニタリングに当たっては、定期的に機械設備の数量及び品質等を実地に確認していること。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
継続的にモニタリングする必要がある事項として、「第三債務者からの入金状況」が例示されていますが、自行(金庫・組合)に入金口座を設定しなければならないのですか。
1.売掛金の入金状況を確実に把握するためには、自行(金庫・組合)に入金口座を設定することが望ましいと考えられますが、債務者と第三債務者との関係等から、これが困難な場合においては、他の金融機関に入金口座が設定されている場合であっても差し支えありません。2.ただし、その場合においては、第三債務者からの入金状況を継続的にモニタリングするため、例えば、債務者から他の金融機関の入金口座への入金状況に関する資料の提出を受けるなどの方策を講じる必要があります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「自行(金庫・組合)と取引関係がない者を第三債務者とする『売掛金担保』」については、「第三債務者の信用情報について、信用査機関から情報を随時入手できること」とされており、「信用調査機関からの情報等」に基づき、第三債務者の財務状況を継続的にモニタリングするとされていますが、中小企業等については、信用調査機関から情報を入手することが困難な場合もあります。このような場合については、「一般担保」として取り扱うことはできないのですか。
1.自行(金庫・組合)と取引関係がない者を第三債務者とする「売掛金担保」についても、可能な限り、「信用調査機関からの情報」など、当該第三債務者の信用力を判断するために必要となる情報を入手し、当該第三債務者の財務状況を継続的にモニタリングする必要があります。、2.一方で、中小企業等については、「信用調査機関からの情報」を入手することが困難な場合も想定されます。3.先ず、情報の入手については、必ずしも「信用調査機関からの情報」でなくても、金融機関における「商業手形担保」の審査実務等も踏まえ、例えば、他の金融機関から、可能な範囲で、適切に情報を入手できれば、原則として、「一般担保」として取り扱って差し支えありません。4.なお、このような情報の入手も困難な場合については、例えば、「債務者から情報」を随時入手できれば、原則として、「一般担保」として取り扱って差し支えありません。5.また、財務状況のモニタリングについては、例えば、上記3又は4のとおり、入手可能な情報に基づき、第三債務者の財務状況を継続的にモニタリングしていれば、原則として、「一般担保」として取り扱って差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「売掛金担保」が「一般担保」として取り扱われるためには、「貸倒率を合理的に算定できること」とされていますが、自行(金庫・組合)と取引関係がない者を第三債務者とする「売掛金担保」については、当該第三債務者に関する情報を十分に入手できないことも想定されます。具体的にどのように貸倒率を算定すればよいですか。、
1.自行(金庫・組合)と取引関係がない者を第三債務者とする「売掛金担保」についても、可能な限り、当該第三債務者の信用力を判断するために必要となる情報を入手し、当該情報に基づき、貸倒率を合理的に算定する必要があります。2.貸倒率の算定方法については、第三債務者の状況等に応じ、様々な態様があると考えられますが、例えば、以下のような場合については、原則として、金融検査マニュアルの要件を満たしているものとして取り扱って差し支えありません。・入手した情報に基づき、第三債務者からの回収可能性を個別に検討し、貸倒率を算定する方法が採られている場合・第三債務者の属性等(業種別、地域別、規模別、個人・法人別、売掛金の金額別等)に応じて、過去の貸倒れに係る実績データ等を蓄積し、貸倒率を算定する方法が採られている場合
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
貸倒率の算定方法として、「第三債務者からの回収可能性を個別に検討」する方法が例示されていますが、どのようなことを具体的に想定しているのですか。、
第三債務者からの回収可能性を個別に検討する方法については、第三債務者の状況等に応じ、様々な態様があると考えられますが、例えば、入手した情報に基づき、期日回収に懸念のある売掛金を回収不能見込額とし、それ以外の売掛金を回収可能見込額として、貸倒率を算定する方法が採られていれば、原則として、金融検査マニュアルの要件を満たしているものとして取り扱って差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
以上のほか、「売掛金担保」が「一般担保」として取り扱われるために、特に留意すべき事項はありますか。、
1.「売掛金担保」が「一般担保」として取り扱われるためには、「登記」や「債務者と第三債務者との契約書」などに基づき、・先行譲渡がないこと・売掛金が商品の売買など実質的な原因に基づいていること・譲渡禁止特約が付されていないことなど、売掛金を担保とするに当たっての前提条件の確認が必要です。2.また、「適切な債権管理が確保され、回収(第三者への譲渡による換価を含む)が確実であると客観的・合理的に見込まれる」ことが必要であることから、債務者から必要な資料の提出を受けることなどの権利をあらかじめ確保しておくとともに、債務者の財務データ等の社内管理体制を把握し、債務者から提出された資料等に基づき、債務者の状況等に応じ、・売掛金の状況(第三債務者名、売掛金の残高、第三債務者への売掛金が全体の売掛金に占める割合、商品返品などによる売掛金の希薄化率等)・第三債務者の債務者に対する反対債権の有無(反対債権がある場合にはその額)・債務者の売上げや資金繰りの状況等を継続的にモニタリングする必要があります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「売掛金担保」が「一般担保」として取り扱われるための要件が明確化されていますが、「リース債権担保」などについても「売掛金担保」として取り扱ってもよいですか。
1.「売掛金担保」については、商品の売買など実質的な原因に基づいた債権であって、比較的短期間で支払われるものを想定しています、2.したがって、売買契約を原因とする債権や診療報酬債権などが代表例ですが、上記1の性格を持つものであれば、これら以外の債権であっても、「売掛金担保」として取り扱って差し支えありません。3.一方で、「リース債権担保」については、様々な態様があるものの、長期間に渡って支払われるものが一般的であることから、多くの場合、「売掛金担保」として取り扱うことはできないものと考えられます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「動産担保」の担保評価額の算出に当たって、特に留意すべき事項はありますか。また、どのような頻度で担保評価額の見直し(再評価又は時点修正)を行うことを想定しているのですか。
1.「動産担保」の担保評価額については例示されている評価方法等により、客観的・合理的に評価額を算出することが必要です。2.このほか、担保評価額の見直しに当たっては、特に、流行に左右されやすい特性を有する在庫品については、物理的な耐用年数の低下又は劣化のみならず、流行の変化又は旧式化に伴う資産価値の低下を考慮した見直しが行われるよう留意することが必要です。3.また、担保評価額の見直しの頻度については、動産の性質等に応じ、様々であると考えられますが、債務者区分が破綻懸念先、実質破綻先又は破綻先である債務者に対する債権に係る個別貸倒引当金については、毎期必要額の算定を行わなければならないこととされていることから、少なくとも年1回は評価額の見直しを行うことが必要です。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「売掛金担保」の担保評価額の算出に当たって、特に留意すべき事項はありますか。
1.「売掛金担保」の担保評価額については、第三債務者の信用力を踏まえ、「貸倒率を合理的に算定」し、これを担保評価額に反映させることが必要です。、2.このほか、以下の事項を担保評価額に適切に反映させることが必要です。、・商品返品などによる売掛金の希薄化率・第三債務者の債務者に対する反対債権の額
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「動産・売掛金担保」の処分可能見込額の算出に使用する掛け目について、「安易に次に掲げる値以下の掛け目に依存していないかに留意する」とされていますが、検査においては、どのような観点から検証が行われるのですか。
1.「動産・売掛金担保」については、「不動産担保」とは異なり、金融機関に必ずしも十分なノウハウがなく、処分実績等も少ないことから、掛け目を合理的に設定することができない場合が多いものと考えられます。2.このような場合については、検査においては、実務上の対応として、金融機関において、実際に処分が行われた担保の処分価格と担保評価額とを比較し、掛け目の合理性を検討の上、必要に応じて掛け目を修正する態勢が整備されているかという観点から検証を行い、金融機関の取組みが明らかに合理性を欠くと認められるものでなければ、当面、金融検査マニュアルに記載されている値以下の掛け目を使用していれば、差し支えない旨、検査官に対して指示しています。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
金融検査マニュアルにおいては、「動産・売掛金担保」の標準的な掛け目(「動産担保」:評価額の70%以下、「売掛金担保」:評価額の80%以下)が記載されていますが、この掛け目よりも高い掛け目を使用してもよいですか。
1.掛け目については、金融機関において、実際に処分が行われた担保の処分価格と担保評価額とを比較し、自ら合理的に設定することが原則です。、2.一方で、「動産・売掛金担保」については、各金融機関において、当該担保の処分実績等も少なく、自ら掛け目を合理的に設定することができない場合が多いと考えられたことから、そうした場合には、標準的な掛け目を使用して、差し支えないこととしています。3.したがって、金融機関において、実際に処分が行われた担保の処分価格と担保評価額とを比較し、自ら掛け目を合理的に設定することができる場合においては、金融検査マニュアルに記載されている標準的な掛け目よりも高い掛け目を使用し て差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
財務状況等が良好な第三債務者に係る「売掛金担保」については、金融検査マニュアルにおける標準的な掛け目よりも高い掛け目を使用することを検討しています。一方で、「実際に処分が行われた担保の処分価格と担保評価額とを比較」するとされていますが、標準的な掛け目よりも高い掛け目を使用する場合においては、「売掛金担保」について、一定の担保権の実行実績が必要ですか。
1.「売掛金担保」について、金融機関が担保権を実行する場合には、入金口座の変更等はあり得るものの、基本的には、第三債務者が、担保権の実行前と同じように、支払期日に買掛金を支払うことにより、金融機関が回収を図ることとなります。、2.したがって、「売掛金担保」については、担保権の実行実績がない場合であっても、例えば、第三債務者からの支払期日における入金実績と担保評価額とを比較することなどにより、金融機関において、財務状況等が良好な第三債務者に係る「売掛金担保」について、金融検査マニュアルに記載されている標準的な掛け目よりも高い掛け目を合理的に設定することができるような場合については、当該掛け目を使用して差し支えありません。3.なお、上記のように、金融機関において、自ら掛け目を合理的に設定することができる場合においては、財務状況等が良好な第三債務者に係る「売掛金担保」について、金融検査マニュアルに記載されている標準的な掛け目よりも高い掛け目を使用することができますが、一方で、標準的な掛け目よりも低い掛け目を使用する必要がある第三債務者に係る「売掛金担保」については、当該掛け目を使用することが必要です。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「売掛金担保」が金融検査マニュアルの「一般担保」の要件を満たしている場合において、担保評価額及び処分可能見込額は、どのように算出すればよいですか。
担保評価額及び処分可能見込額の算出方法については、様々な態様があると考えられますが、例えば、以下のような場合については、原則として、金融検査マニュアルの要件を満たしているものとして取り扱って差し支えありません。(1)担保評価額・第三債務者からの回収可能性を個別に検討する方法については、入手した情報に基づき、「売掛金担保」から期日回収に懸念のある売掛金を回収不能見込額として控除し、回収可能見込額を算出・回収可能見込額とした「売掛金担保」について、第三債務者からの入金実績等から希薄化率を算定し、担保評価額に反映・さらに、第三債務者の債務者に対する反対債権の額を担保評価額に反映、(注)第三債務者からの回収可能性を統計的に検討する方法については、過去の貸倒れに係る実績データ等に基づき、回収可能見込額を算出し、さらに、当該データ等に希薄化率及び反対債権の額が含まれていない場合には、これらを担保評価額に反映、(2)処分可能見込額・上記(1)により算出した担保評価額に、80%以下の掛け目を乗じる。・なお、当該第三債務者からの支払期日における入金実績と担保評価額とを比較することなどにより、金融機関において、自ら掛け目を合理的に設定することができる場合については、80%超の掛け目を使用して差し支えありません。、(注)担保評価額の精度が高いことについて、過去の実績から合理的な根拠がある場合においては、担保評価額を処分可能見込額として差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
例えば、「社会保険診療報酬支払基金に対する診療報酬債権」が「一般担保」として取り扱われるためには、各要件について、どのようなことを具体的にすればよいですか。また、担保評価額及び処分可能見込額は、どのように算出すればよいですか。
1.「社会保険診療報酬支払基金に対する診療報酬債権」が「一般担保」として取り扱われるための管理手法については、様々な態様があると考えられますが、当該債権を担保とするに当たっての前提条件の確認などを行った上で、例えば、以下のような場合については、原則として、金融検査マニュアルの要件を満たしているものとして取り扱って差し支えありません。対抗要件の具備「民法」に基づく「確定日付のある証書による通知」、又は「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」に基づく「債権譲渡登記に加えて、登記事項証明書の交付を伴う通知」が行われている場合 第三債務者について信用力を判断するために必要となる情報を随時入手できること債務者と社会保険診療報酬支払基金との取引状況等について、債務者から情報を随時入手できるとともに、当該基金の決算情報等について、公開情報を随時入手できる場合 第三債務者の財務状況が継続的にモニタリングされていること社会保険診療報酬支払基金から債務者への入金状況等及び当該基金の財務内容等が、債務者からの情報や公開情報に基づき、継続的にモニタリングされている場合 貸倒率を合理的に算定できること社会保険診療報酬支払基金に対する診療報酬債権の期日回収に懸念がないことを確認している場合 2.また、担保評価額及び処分可能見込額の算出方法についても、様々な態様があると考えられますが、例えば、以下のような場合については、原則として、金融 検査マニュアルの要件を満たしているものとして取り扱って差し支えありません。 担保評価額社会保険診療報酬支払基金に対する診療報酬債権の期日回収に懸念がないことを確認した上で、過去の実績等から、当該基金の審査による査定率等を算出し、これを評価額に反映させている場合 処分可能見込額掛け目を使用する場合については、担保評価額に 80%以下の掛け目を乗じて処分可能見込額を算出している場合なお、担保評価額の精度が高いことについて、過去の実績から合理的な根拠がある場合においては、担保評価額を処分可能見込額として差し支えありません。 (注)「国民健康保険団体連合会に対する診療報酬債権」についても、上記1及び 2に準じて、取り扱って差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「売掛金担保」については、「決済確実な商業手形」に準じて、「優良担保」として取り扱うことはできないのですか。
1.「優良担保」については、金融検査マニュアルにおいて、「預金等、国債等の信用度の高い有価証券及び決済確実な商業手形等」と記載されています。2.「商業手形」については、原則として、人的抗弁が切断されますが、「売掛金」については、原則として、人的抗弁が切断されないので、「売掛金担保」については、「商業手形担保」に比して、回収可能性が劣ることとなり、原則として、「優良担保」として取り扱うことはできません。3.ただし、「売掛金担保」についても、その支払人から、「異議をとどめない承諾」を得た場合においては、「譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない」(民法第 468 条第 1 項)とされていることから、「異議をとどめない承諾」を得た「売掛金担保」については、「決済確実な商業手形」の要件(注)に準じた要件を備えている限り、原則として、「優良担保」として取り扱って差し支えありません。(注)金融検査マニュアルにおいて、「『決済確実な商業手形』とは、手形振出人の財務内容及び資金繰り等に問題がなく、かつ、手形期日の決済が確実な手形をいう。ただし、商品の売買など実質的な原因に基づかず、資金繰り等金融支援のために振り出された融通手形は除かれる」としています。2.ABLにより「貸出条件緩和債権」に該当しない場合等の明確化【別冊〔中小企業融資編〕検証ポイント5.⑵ホ】
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
貸付条件の変更を行った中小企業等に対して、ABL(注)により、事業の流れやキャッシュフロー等をモニタリングしながら、経営指導等を行っている場合においても、経営改善計画等を策定していない限り、「貸出条件緩和債権」に該当するのですか。(注)ABLの定義は様々ですが、ここでは、「動産・売掛金等の流動資産を担保とし、担保資産をモニタリングし、融資を行う手法」とします。
1.金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕においては、中小企業等の場合、企業の規模、人員等を勘案すると、大企業の場合と同様な大部で精緻な経営改善計画等を策定できない場合があることを踏まえ、中小企業等が経営改善計画等を策定していない場合であっても、「債務者の技術力、販売力や成長性等を総合的に勘案し、債務者の実態に即して金融機関が作成した経営改善に関する資料がある場合には、『貸出条件緩和債権』に該当しない」こととしています。また、中小企業等の「技術力、販売力、経営者の資質やこれらを踏まえた成長性を評価するに当たっては、金融機関の企業訪問、経営指導等の実施状況や企業・事業再生実績等を検証し、それらが良好であると認められる場合には、原則として、金融機関が企業訪問や経営指導等を通じて収集した情報に基づく当該金融機関の評価を尊重する」こととしています。2.一方で、ABLについては、担保資産の管理等を通じて、債務者の事業の流れやキャッシュフロー等の継続的なモニタリングを行うこととなることから、債務者の経営実態の把握に資するという特質があります。3.こうしたABLの特質を踏まえると、中小企業等が経営改善計画等を策定していない場合であっても、金融機関が、ABLにより、当該企業等の経営実態を把 握した上で、当該企業等の経営改善に関する資料を作成している場合については、原則として、これを「実現可能性の高い抜本的な計画」とみなして、「貸出条件緩和 債権」に該当しないこととして差し支えありません。、【別冊〔中小企業融資編〕検証ポイント5.⑵ホ】、
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
「ABLにより、当該企業等の経営実態を把握した上で、当該企業等の経営改善に関する資料を作成している場合については、…『貸出条件緩和債権』に該当しないこととして差し支えありません」とされていますが、この場合の担保資産については、金融検査マニュアルの「一般担保」の要件を満たしている必要はありますか。
1.金融検査マニュアルにおいては、金融機関の債権について、将来の予想損失額を適正に見積る観点から、担保資産の「客観的な処分可能性」を確保するために、「一般担保」の要件を記載しています。2.一方で、ABLにおける担保資産については、その「客観的な処分可能性」に着目するのではなく、ABLの特質を踏まえ、担保資産の管理等を通じて、債務者の経営実態を把握することに着目した取扱いであることから、必ずしも、 金融検査マニュアルの「一般担保」の要件を満たしている必要はありません。3.ただし、金融検査マニュアルの「一般担保」の要件を満たしていないものについては、金融機関が自己査定を行う場合において、「一般担保」として取り扱うことができないため、債務者が破綻懸念先、実質破綻先又は破綻先となった場合であっても、担保資産の処分可能見込額を勘案した貸倒引当金の計上及び直接償却を行うことはできません。4.なおABLについては、担保資産の管理等を通じて、債務者の経営実態を把握することに着目した取扱いであることを踏まえると、在庫、売掛金等の流動資産を一体として担保取得することが望ましいと考えられます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
金融機関が作成した「経営改善に関する資料」には、どのような要件が必要ですか。同資料の作成に当たって、外部専門家などを活用する必要はありますか。
1.「経営改善に関する資料」については、「実現可能性の高い抜本的な計画」とみなして取り扱うものであることから、中小企業等における同計画の要件(注)を満たしている必要があります。 2.また、「経営改善に関する資料」については、金融機関が、ABLにより、当該企業等の経営実態を把握した上で作成したものであれば、必ずしも外部専門家などを活用する必要はなく、金融機関が、自ら融資先の管理資料として作成したもので、差し支えありません。 「計画期間」「原則として概ね5年以内」であり、かつ、計画の実現可能性が高いこと。ただし、中小企業については、当面、「5年を超え概ね10 年以内」となっている場合であっても、明らかに達成困難と認められなければ、差し支えない(金融検査マニュアルに関するよくあるご質問(FAQ)9-51)。 「計画期間終了後の債務者区分」「原則として正常先」であること。ただし、計画期間終了後に、金融機関の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、「要注意先」であっても差し支えない。 「取引金融機関等の支援状況」全ての取引金融機関等が、経営改善計画等に基づく支援に合意していることが確認できること。ただし、一部の取引金融機関等が支援を行うことにより再建が可能な場合は、当該取引金融機関等が経営改善計画等に基づく支援に合意していることが確認できれば足りる。 「金融機関等の支援内容」支援の内容が、金利減免、融資残高維持等に止まり、債権放棄、現金贈与などの資金提供を伴うものではないこと。ただし、経営改善計画等に基づき、今後債権放棄等を計画的に行う必要があるが、既に支援による損失見込額を全額引当金として計上済で、今後は損失の発生が見込まれない場合などを含む。
金融庁
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中小企業等における「実現可能性の高い抜本的な計画」の要件の一つとして、「全ての取引金融機関等が、経営改善計画等に基づく支援に合意していることが確認できること」とされていますが、全ての取引金融機関等の合意を得ることが困難な場合については、自行(金庫・組合)が単独で支援を行うことにより再建が可能な場合であっても、自行(金庫・組合)が作成した「経営改善に関する資料」を「実現可能性の高い抜本的な計画」とみなして取り扱うことはできないのですか。
1.金融検査マニュアルにおいては、中小企業等における「実現可能性の高い抜本的な計画」の要件の一つとして、「全ての取引金融機関等が、経営改善計画等に基づく支援に合意していることが確認できること」を原則としつつも、「一部の取引金融機関等が支援を行うことにより再建が可能な場合は、当該取引金融機関等が経営改善計画等に基づく支援に合意していることが確認できれば足りる」こととしています。、2.したがって、「全ての取引金融機関等の合意を得ることが困難な場合」であっても、「自行(金庫・組合)が単独で支援を行うことにより再建が可能な場合」については、原則として、自行(金庫・組合)が作成した「経営改善に関する資料」を「実現可能性の高い抜本的な計画」とみなして、「貸出条件緩和債権」に該当しないこととして差し支えありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
ABLによりモニタリングを行っている債務者を、それ以外の債務者と区別してグルーピングし、一般貸倒引当金に係る予想損失額を算定してもよいですか。また、グルーピングに当たって、特に留意すべき事項はありますか。
1.金融検査マニュアルにおいては、「被検査金融機関のポートフォリオの構成内容(債務者の業種別、債務者の地域別、債権の金額別、債務者の規模別、個人・法人別、商品の特性別、債権の保全状況別など)に応じて、一定のグループ別に予想損失額を算定する方法などにより、被検査金融機関の債権の信用リスクの実態を踏まえ、一般貸倒引当金を算定することが望ましい」こととしています。2.一方で、ABLについては、担保資産の管理等を通じて、債務者の事業の流れやキャッシュフロー等の継続的なモニタリングを行うこととなることから、経営 悪化時においても、早期に経営改善を促すことが可能となり、その結果、金融機 関の信用リスクの減少をもたらし、引当率の低減をもたらすものと考えられます。3.こうした考え方を踏まえると、ABLによりモニタリングを行っている債務者については、それ以外の債務者と区別してグルーピングを行い、一般貸倒引当金に係る予想損失額を算定して差し支えありません。4.その場合、グルーピングに当たっては、原則として、・グルーピングの基準が明確となっていること・十分な母集団が確保されていること・予想損失額の算定に当たって、その算定期間が少なくとも過去3算定期間の貸倒実績率又は倒産確率に基づき、算定されていることが必要です。5.なお、この取扱いについては、担保資産の管理等を通じて、債務者の経営実態 を把握することに着目したものであることから、担保資産については、必ずしも、金融検査マニュアルの「一般担保」の要件を満たしている必要はありません。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf
金融検査マニュアルとは何ですか。
金融検査マニュアルは、検査官が、預金等受入金融機関を検査する際に用いる手引書として位置付けられるものであり、各金融機関においては、金融検査マニュアルを参照しつつ、自己責任原則に基づき、経営陣のリーダーシップの下、創意・工夫を十分に生かし、それぞれの規模・特性に応じた方針、内部規程等を作成し、金融機関の業務の健全性と適切性の確保を図ることが期待されます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
金融検査の基本的考え方について教えて下さい。
1.「本マニュアルにより検査を行うに際しての留意事項」(以下「留意事項」という。)において、金融検査の基本的考え方等については、「金融検査に関する基本指針(金検第369号)」(平成17年7月1日)において示されているところであり、本マニュアルの解釈及び運用は、当該基本指針に基づいて行うとしています。2.当該基本指針の中で、金融検査の使命とは、法令が求める金融機関の業務の健全性及び適切性の確保のため、立入検査の手法を中心に活用しつつ、金融機関の各管理態勢を検証し、その問題点を指摘するとともに、金融機関の認識を確認することと明記しています。3.金融検査の使命を的確に果たすため、5つの基本原則(①利用者視点の原則、②補強性の原則、③効率性の原則、④実効性の原則、⑤プロセス・チェックの原則)に即して検査を実施することとしています。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
金融検査マニュアルの構成について教えて下さい。
1.健全な事業を営む顧客に対して必要な資金を円滑に供給していくことは、金融機関の最も重要な役割の一つであり、金融機関には、金融仲介機能を積極的に発揮していくことが強く期待されています。一方で、金融機関が金融仲介機能を積極的に発揮していくためには、健全な財務基盤と強固で包括的なリスク管理態勢の整備が求められます。2.このため、金融検査マニュアルについては、①金融機関の経営管理の基本的要素が機能しているかを検証する「経営管理(ガバナンス)」に加え、②金融機関におけるコンサルティング機能の発揮や金融円滑化一般を検証する「金融円滑化編」、③法令等遵守態勢、顧客保護等管理態勢やリスク管理態勢を検証する「リスク管理等編」という構成としています。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
改訂金融検査マニュアルにおいて、ミニマム・スタンダードという用語を使わないこととした理由は何ですか。また、ベスト・プラクティスとして期待される項目が旧マニュアルに比べ少なくなっていますが、その理由は何ですか。
1.旧マニュアルにおいては、「チェック項目に記述されている字義通りの対応が金融機関においてなされていない場合であっても、金融機関の業務の健全性及び適切性確保の観点からみて、金融機関の行っている対応が合理的なものであり、さらに、チェック項目に記述されているものと同様の効果がある、あるいは金融機関の規模や特性に応じた十分なものである、と認められるのであれば、不適切とするものではない」とする一方で、「しているか」「なっているか」の語尾になっているチェック項目については、全ての金融機関に対してミニマム・スタンダードとして求められる項目としていたことから、これらが一律の規制であるとの誤解を招きかねない面がありました。2.今回の改訂金融検査マニュアルにおいては、こうした誤解を招くことを避ける観点から、ミニマム・スタンダードという用語を使うことを避け、単に、「金融機関が達成していることを前提として検証すべき項目」として整理しています。3.また、マニュアルの留意事項として、「各金融機関においては、自己責任原則に基づき、経営陣のリーダーシップの下、創意・工夫を十分に生かし、それぞれの規模・特性に応じた方針、内部規程等を作成し、金融機関の業務の健全性と適切性の確保を図ることが期待される」としているところであり、ベスト・プラクティスとして金融機関のあるべき姿をマニュアルにおいて示すのは、かえって金融機関の創意・工夫を阻害するおそれもあることから、今回の改訂に際しては、極力ベスト・プラクティスとして記載する項目を削減しました。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
金融機関の規模・特性はどのように検査に反映されますか。
1.留意事項において、チェック項目について記述されている字義どおりの対応が金融機関においてなされていない場合であっても、金融機関の業務の健全性及び適切性の確保の観点からみて、金融機関の行っている対応が合理的なものであり、さらに、チェック項目に記述されているものと同様の効果がある、あるいは金融機関の規模・特性に応じた十分なものである、と認められるのであれば、不適切とするものではないとしています。2.例えば、各態勢のチェックリストに記載された部門が設置されていない場合には、検査官は、当該金融機関の規模・特性を踏まえ、必要な機能を十分に発揮することができ、かつ、相互牽制が機能する組織態勢が整備されているかを検証します。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
各管理態勢の確認検査用チェックリストにおける共通点を教えて下さい。
1.金融機関の内部管理態勢の構築に当たっては、経営陣の役割・責任が重要です。そこで、各管理態勢の確認検査用チェックリストは、基本的に「Ⅰ.経営陣による態勢整備・確立状況」「Ⅱ.管理者による態勢整備・確立状況」「Ⅲ.個別の問題点」の三部構成にすることにより、経営陣が果たすべき役割・責任について明確化しています。2.また、各管理態勢について、管理方針や組織体制・規程を整備しているかを検証するだけではなく、既存の態勢が、常に改善されているかどうかといった動的プロセスとしての内部管理態勢の状況を検証することを重視しています。具体的にいうと、①方針の策定(Plan)、②規程・組織体制の整備(Do)、③評価(Check)・改善(Action)をそれぞれ適切に行っているか、言い換えれば、いわゆるPDCAサイクルが有効に機能しているかという観点から検証項目を整理しています。3.さらに、各リスク管理態勢における各管理部門の役割・責任については、リスクの①特定・評価、②モニタリング、③コントロール及び削減、④検証・見直し、といったリスク管理プロセスが適切に機能しているかを検証します。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
各検証ポイントにおいて記載されている「検査官が認識した弱点・問題点を経営陣が認識していない場合」とは、どのような場合ですか。また、「態勢が有効に機能していない可能性も含めて検証し、双方向の議論を通じて確認する」とは、どのような趣旨ですか。
1.「弱点・問題点を経営陣が認識していない場合」には様々な場合が考えられます。例えば、内部監査部門が有効に機能していない結果、経営陣が問題点を把握できていないというケースもありえますし、各管理者レベルでは問題点の洗い出しをしているにもかかわらず、経営陣が報告を受けていないことから、検査によって初めて経営陣が問題の所在を把握するということもあると考えられます。2.このように、経営陣が弱点・問題点を認識していない要因は態勢面における何らかの問題点に起因している可能性が高いと思われることから、改訂金融検査マニュアルの検証ポイントにおいて「態勢が有効に機能していない可能性も含めて検証し、双方向の議論を通じて確認する」ということを記載しました。
金融庁
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改訂金融検査マニュアルで求められる内部管理態勢は、企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」で求められる財務報告に係る内部統制と同一と理解してよいでしょうか。
「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」については、あくまで金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制に関する基準であり、金融機関の業務の健全性と適切性を目的とした金融検査マニュアルにおける内部管理とは一部重なる部分があるものの、必ずしも同一となるわけではありません。
金融庁
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取締役会(等)の役割とされているものについては、取締役会(等)が自ら全ての事項を実際に行わなければならないのですか。
取締役会(等)自身が、必要な全ての具体的行動を行うことを意味するものではありません。例えば、「組織体制の整備プロセスの有効性の検証」については、取締役会(等)が、他の者に委任又は指示し、情報を収集・分析させたものを検証し、組織体制の整備プロセスの有効性を判断するという形態などが想定されます。いずれにしても、取締役会(等)が自ら実質的な判断・意思決定を行う態勢が確保されていることが重要です。
金融庁
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取締役会等には、常務会、経営会議等が含まれるのですか。例えば、経営会議が「決議」機関ではなく、「協議」機関となっており、経営会議協議後に代表取締役による合議決裁を経るプロセスとなっている場合はどうでしょうか。
1.留意事項において、「取締役会等」には、取締役会のほか、常務会、経営会議等の、経営陣レベルによって構成される経営に関する事項を決定する組織(以下「常務会等」という。)も含むとされています。しかしながら、経営の意思決定については様々な形態がありますので、形式的に名称が「常務会」「経営会議」等となっていたとしても、十分とはいえない可能性もあります。同様に、決議機関か協議機関かだけで判断することはなく、個々の金融機関における意思決定プロセスの実態を十分踏まえ、事実上の意思決定機関といえる状況にあるかどうか検証します。2.例えば、代表取締役が経営会議による議論をまったく尊重せず、独断で決定しているような実態があれば、経営会議は事実上経営に関する事項を決定することができないのであり、「取締役会等」に該当しない場合もあると考えられます。3.なお、留意事項②においては、「なお、取締役会等の役割とされている項目についても、取締役会自身において決定することが望ましが、常務会等に委任している場合には、取締役会による明確な委任があること、常務会等の議事録の整備等により事後的検証を可能としていることに加え、取締役会への結果報告や常務会等に監査役の参加を認める等の適切な措置により、十分な内部牽制が確保されるような態勢となっているかを確認する必要がある」とされています。
金融庁
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管理者のレベルで考えるべき点と、部門のレベルで考えるべき点との切り分けはどのようになっているのですか。
1.管理者は、部門のトップとして部門の態勢を具体的に整備する役割を担う者として一般に整理しています。2.部門は、管理者の指示により、実際の管理活動を行うものとして一般に整理しています。
金融庁
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「定期的に又は必要に応じて随時」と記載されており、「定期的」とは各事案に応じて検討されるものと考えますが、事案によっては2~3年の周期で見直しを行うことも認められるという理解でよいでしょうか。
「定期的」については特段年限を定めておりませんが、見直しのプロセスが有効に機能しているかという観点から判断することとなります。
金融庁
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取締役でない「執行役員」は、担当取締役に含むと考えてよいでしょうか。
1.「執行役員」は、「執行役」(委員会設置会社の業務執行をおこなう機関(会社法第418条))と異なり、業務執行に関しては相当の裁量権限を有するものの、法的には会社の機関ではなく、一種の重要な使用人(会社法第362条第4項第3号)に該当します。2.改訂金融検査マニュアルにおいては、執行役員が担当取締役の役割と責任を負っているような場合には、次のように扱うこととしています。「担当取締役としての役割及び責任について、いわゆる執行役員(非取締役)が担っている場合には、当該執行役員が取締役会により担当取締役と実質的に同等の権限を付与されているか、責任の所在が明確になっているか、担当する業務執行について取締役会による十分な監視が行われているか、等を総合的に検証した上、各チェックリスト上担当取締役に求められる役割及び責任を十分果たしているか検証するものとする。」(
金融庁
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経営管理(ガバナンス)において重要なことは何ですか。また、検査においては何を検証しますか。
1.金融機関の経営管理(ガバナンス)が有効に機能するためには、①適切な内部管理の観点から、取締役をはじめとする役員が、高い職業倫理観を涵養し、全ての職員に対して内部管理の重要性を強調・明示する風土を組織内に醸成すること及び②各役職員が、内部管理の各プロセスにおける自らの役割を理解し、プロセスに十分に関与することが重要です。2.経営管理(ガバナンス)態勢の確認検査用チェックリストでは、金融機関の経営管理の基本的要素が機能しているかを検証することとしています。具体的には、①代表取締役、取締役及び取締役会による経営管理(ガバナンス)態勢、②内部監査態勢、③監査役による監査態勢、④外部監査態勢といった4つの金融機関における基本的要素がその機能を実効的に発揮しているかという観点から、それぞれ検証することとしています。
金融庁
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「経営管理(ガバナンス)態勢」と各管理態勢における「Ⅰ.経営陣による態勢の整備・確立状況」の関係はどのようになっていますか。
1.「経営管理(ガバナンス)態勢」は、金融機関の経営管理の基本的要素となる部分を検証するものです。一方、各態勢における「Ⅰ.経営陣による態勢の整備・確立状況」は、金融機関が整備・確立すべき各態勢に関し、経営陣がどのようなガバナンスを発揮して具体的に態勢の整備・確立を行っているかを検証するものです。2.例えば、ある管理態勢について、取締役の認識が不十分であり、取締役会において適切な管理方針が定められていないのではないかという点については、各態勢の「Ⅰ.経営陣による態勢の整備・確立状況」で検証する一方、そもそも取締役会が形骸化しており、その役割を果たしていないのではないかという点については、「経営管理(ガバナンス)態勢」で検証するものです。3.また、例えば、取締役会が内部監査部門に対し十分な権限を与えていなかったことから、内部監査がその機能を発揮していないような場合には、「経営管理(ガバナンス)態勢」の内部監査部門の態勢整備】の問題として検証することになり、一方、例えば、内部監査実施要領の記載が十分でなく、監査すべき項目が脱落していたために監査漏れが生じたような場合には、漏れが生じている態勢の「Ⅰ.経営陣による態勢の整備・確立状況」の問題として検証することになります。
金融庁
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「内部管理基本方針」の検証が新設されましたが、これは何ですか。
1.改訂金融検査マニュアルにおいて「内部管理基本方針」とは、「当該金融機関の業務の健全性・適切性を確保するための態勢の整備に係る基本方針」としております(経営管理Ⅰ.1.③)。また、「内部統制基本方針」「内部統制方針」「内部管理方針」等の名称のいかんを問わず、検証することとしています。(経営管理脚注1)2.なお、会社法の適用のない金融機関については、会社法上の要件を充足する必要はありませんが、当該金融機関の内部管理を適切に行う上での基本的な事項が適切に記載されているかを検証することになります。
金融庁
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新規商品等はどのように決めるのですか。また、審査の主体・内容や方法についてはどのように考えればよいですか。
1.新規商品等の導入は、従来の業務に加え、新たなリスクや法令上の問題を生じさせるものであり、その導入の可否や導入に伴う態勢整備について、入り口段階での慎重な検討が必要と考えられることから、その審査について検証の対象としたものです。2.新規商品等の定義は、この趣旨を踏まえ、各金融機関が定めるものですが、定義が狭く、審査がほとんど行われていない等、その機能が達成されていないと懸念される場合には、その定義の適切性を検証することになります。また、審査の主体・内容や方法も金融機関が決めていることを前提に、その審査の実効性を検証します。
金融庁
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「モニタリング」とは何ですか。
業務運営の状況やリスクの状況の報告を適時に受け、または調査させることによって、経営の現状を的確に把握し、方針の有効性・妥当性や全体としての態勢の実効性を検証することを意味しています。また、改訂金融検査マニュアルにおける「モニタリング」には、法令、方針、内部規程等に反する懸念のある行動を抑止することも含むものとしています。
金融庁
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「原資料」とは何ですか。
1.取締役会等の議事録については、どのような議論がなされたか具体的に記載されていないなど簡潔に記載されていることがありますが、経営管理の観点からは、取締役会等における議案及び議事の内容の詳細な記録が残されていなければその適切性を検証することができないため、「原資料と併せて」「議案及び議事の内容の詳細が確認できるものとなっているか。」を検証することとしました。2.原資料の例としては、例えば、議事録として整えられる前に作成された議事の詳細な記録、発言内容メモや、会議に提出された資料等が挙げられますが、これらに限られるものではなく、経営管理の観点から必要となるものを適切に保存及び管理しているかを検証するものです。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「監査役は、監査役及び監査役会を補佐する適切な人材を、適正な規模で確保しているか」とありますが、選任しなければならないのでしょうか。また、兼担者では適切ではないことになるのでしょうか。
適切な人材を適正な規模で確保することを求めているだけであり、「適正な規模」の解釈として、補佐のための人員がなくとも、監査役の職務を十分遂行できる場合や兼担者で十分に補佐業務が遂行できる場合には、補佐のための専担者を選任しなくとも不適切とするものではありません。3.金融円滑化編
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
金融円滑化において重要なことは何ですか。また、検査においては何を検証しますか。
1.金融機関にとって金融円滑化管理態勢の整備・確立は、金融機関の業務の健全性及び適切性の確保のため必要不可欠なものであり、経営陣には、金融円滑化管理方針を決定し、組織体制の整備を行うなど、金融機関の業務の全般にわたる金融円滑化管理態勢の整備・確立を自ら率先して行う役割と責任があります。2.検査においては、・顧客の経営実態等を踏まえて、適切に新規融資や貸付条件の変更を行うこと・債務者の経営実態を踏まえて、経営相談・経営指導及び経営改善に関する支援を行なうこと・与信取引に関し、顧客に対する説明が適切かつ十分に行われること・顧客からの与信取引に係る問い合わせ、相談、要望及び苦情への対応が適切に実施されること等を確保するための態勢が有効に機能しているかについて検証することになります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
時限立法である中小企業金融円滑化法は失効しますが、「金融円滑化編」も時限措置ではないのですか。また、今回(平成25年3月)、どのような改定が行われたのですか。
1.「金融円滑化編」は、検査において金融円滑化及び中小企業金融円滑化法の実効性確保のために特に留意すべき項目を整理し、着眼点を明確化するため、平成21年12月に策定したものであり、策定時から、「時限立法である中小企業金融円滑化法に係る項目以外の項目は、同法の期限が到来した後の検査においても適用することとし、恒久措置」として位置づけています。2.平成25年3月の改定においては、時限立法である中小企業金融円滑化法に係る項目を削除するとともに、金融円滑化の重要性に鑑み、・円滑な資金供給(新規の信用供与を含む。)や貸付条件の変更等に係る項目・他の金融機関等との連携に係る項目等を追加したところです。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
金融円滑化編の対象となる金融機関を教えて下さい。
1.「金融円滑化編」は、金融検査マニュアル本マニュアルにより検査を行うに際しての留意事項】に掲げる金融機関のうち、外国銀行の在日支店を除く金融機関を対象とすることとしています。2.なお、外国銀行の在日支店については、中小企業向け融資等が少ないと考えられることから、「金融円滑化編」の対象から除いていますが、業務の特性等を踏まえ、金融円滑化の観点から必要があれば、適宜検証することとなります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
金融円滑化管理については、他のリスク管理などとコンセプトが異なり、部門の設置を求めていませんが、なぜこのようになっているのでしょうか。
1.「金融円滑化編」では、現在の金融機関の金融円滑化の取組みや組織体制のあり方が様々であること、金融機関による金融円滑化のための自主的な取組みのインセンティブを阻害しないようにすること等を踏まえ、他のチェックリストとはやや異なる枠組みにしています。例えば、金融円滑化管理責任者の所属を例示することは、金融機関の取組みを固定化してしまう可能性があり、ここでは明示していません。したがって、検査においては、金融円滑化管理責任者に求められる役割・機能が実効的に発揮され、問題が生じていないかという観点から検証を行うこととなります。2.なお、金融円滑化管理責任者は、「金融円滑化管理態勢を整備・確立するための金融円滑化管理全般を統括する責任者」という位置付けとしています。このように、金融円滑化管理責任者は、基本的には、他の管理態勢における管理部門の管理者と同等のレベルの役割・責任を担うことを想定しています。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「顧客からの新規融資や貸付条件の変更等の相談・申込みに対し、顧客の実情にそぐわない担保・保証の要求、貸付条件の提示、金利の引上げ等を行っていないか。」とありますが、今後、金融機関側から、追加担保・保証の要求や、貸付条件の提示、金利の引上げ等を申し入れてはならないのでしょうか。
1.本項目は、金融機関側からの追加担保・保証の要求や、貸付条件の提示、金利の引上げ等の申し入れを一律に禁止するものではありません。2.ただし、そのような場合には、例えば、顧客の返済能力や担保余力、金融機関が経営相談・経営指導や経営改善計画の策定支援といった取組みを行うことによる経営改善の見通しなどといった顧客の実情を十分に考慮するとともに、これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた、顧客の理解と納得を得ることを目的とした十分な説明を行う必要があると考えます。
金融庁
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新規融資や貸付条件の変更の申込みを謝絶する場合について、これまでの取引関係や顧客の知識・経験及び財産の状況等を踏まえた十分な説明を行えば、最終的に顧客の理解と納得を得ることができないとしても問題はないでしょうか。
金融機関においては、顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明を行うよう努めることが重要です。なお、最終的に顧客の納得が得られない場合も考えられますが、このような場合には、その後の適切な対応(顧客サポート等)が必要であると考えます。
金融庁
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顧客から新規融資や貸付条件の変更の相談・申込みを受けた場合の記録の作成・保存について、どの程度具体的な相談・申込みがあった場合にこれを行えばよいでしょうか。
1.記録の作成・保存は、金融機関が自らの金融円滑化管理態勢を事後検証するためや顧客とのトラブルの回避などのために行うものです。したがって、各金融機関においては、こうした目的が達成できるよう、適切に記録の作成・保存を行う必要があります。2.なお、当該記録については、例えば、営業日誌に記録するなど、金融機関の業務実態等を踏まえた適切な方法により行うことが考えられます。
金融庁
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「取引先である中小・零細企業等に対する経営相談・経営指導及び経営改善計画の策定支援等の取組み等」として示されている項目については、これらの対応をすべて行う必要があるのでしょうか。
1.金融機関が経営相談・経営指導や経営改善計画の策定支援等のコンサルティング機能を発揮することは、金融の円滑化を図る観点から極めて重要です。本項目はあくまでも例示であり、これらすべての項目について対応を求めるものではありませんが、各金融機関においては、本項目に例示された事項を参考に、それぞれの規模・特性を踏まえ、創意工夫を発揮した対応を行う必要があると考えられます。2.また、本項目に例示されていない事項であっても、例えば、資金繰りや売上げ等に係る経営改善指導、財務書類の作成や後継者育成等に係る相談など、取引先である中小・零細企業等の身の丈・ニーズをあった身近な情報提供・経営相談・経営指導に取組むこと等が重要であると考えられます。
金融庁
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保証会社との「緊密な連携」とは具体的にどのようなことを行えばよいのでしょうか。
1.保証会社が保証を付与しない場合や条件変更に応じない場合には、例えば、可能な範囲で、保証会社に理由を確認した上で顧客に説明することや説明の際に保証会社の担当者を同席させること、金融機関単独での説明に納得しない顧客に対し、保証会社と連携して説明をすることなどが考えられます。2.いずれにしても、顧客の理解と納得が得られるよう、適切な説明を行うことが重要です。
金融庁
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保証会社における審査や保証会社が代位弁済により取得した債権の回収行為(求償権の行使)について、金融機関としてどのように指導・協議・要請等を行えばよいのでしょうか。
1.保証会社が子会社の場合においては、当該保証子会社において適切な審査や債権回収が行われるよう、子会社管理の一環として当該保証子会社に対し、必要に応じて指導等を行う必要があると考えます。2.また、保証会社が子会社でない場合でも、例えば、顧客から金融機関に、当該保証会社の審査や債権回収について苦情や相談が寄せられているようであれば、当該保証会社において適切な審査や債権回収が行われるよう、必要に応じて協議や要請等を行う必要があると考えます。4.法令等遵守態勢
金融庁
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法令等遵守態勢において重要なことは何ですか。
金融機関にとって法令等遵守態勢の整備・確立は、金融機関の業務の健全性及び適切性を確保するための最重要課題の一つであり、経営陣には、法令等遵守態勢の整備・確立のため、法令等遵守に係る基本方針を決定し、組織体制の整備を行う等、金融機関の業務の全般にわたる法令等遵守態勢の整備・確立を自ら率先して行う役割と責任があります。
金融庁
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「金融機関の様々な部署に散在する法令等遵守に関する情報」とは、具体的にどのようなものをいうのでしょうか。
1.既に発生した法令等違反行為に関する情報以外にも、法令等違反の未然防止や再発防止に役立つ様々な情報を含みます。2.法令等違反の未然防止や再発防止に役立つ様々な情報とは、例えば、顧客サポート等管理責任者が把握する情報のうち、反復継続して起きる相談・苦情等の中でも特に法令等違反に結びつく懸念のある事例に関する情報などが挙げられます。
金融庁
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「コンプライアンス統括部門が他の業務との兼務をする場合」とは、どのような場合のことをいうのでしょうか。例えば、コンプライアンス統括部門が内部監査部門の役割も有している場合、どのように判断すればよいですか。
コンプライアンス統括部門が、他の業務、例えば、内部監査に係る業務などを兼任しているような場合を想定しています。この場合に、営業推進部門等からの干渉を防止し、コンプライアンス統括部門の有する機能を阻害しない態勢になっているかを検証するものです。
金融庁
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「コンプライアンス担当者」と「コンプライアンス・オフィサー」とはどのような違いがあるのでしょうか。
1.「コンプライアンス・オフィサー」は、例えば、海外拠点等のようにコンプライアンス統括部門による日常のモニタリングが困難な事情のある場合に、当該拠点の法令等遵守を確保する役割を負うものとしています。2.一方、「コンプライアンス担当者」は、管理者やコンプライアンス統括部門と連携し、各業務部門の情報を収集し伝達するなど、モニタリングのための役割を負うものとしています。
金融庁
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「法令等遵守方針」「コンプライアンス・マニュアル」「コンプライアンス・プログラム」の関係を教えてください。
1.法令等遵守方針とは、取締役会が経営方針に則り定めた法令等遵守に係る基本方針のことです。2.コンプライアンス・マニュアルとは、取締役会が管理者に、法令等遵守方針及び法令等遵守に関する取り決めを明確に定めた内部規程(法令等遵守規程)に沿って策定させた、役職員が遵守すべき法令等の解説、違反行為を発見した場合の対処方法等を具体的に示した手引書のことです。3.コンプライアンス・プログラムとは、取締役会が管理者に、コンプライアンスを実現させるために法令等遵守方針及び法令等遵守規程に沿って策定させた具体的な実践計画(内部規程の整備、職員等の研修計画など)のことです。
金融庁
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「コンプライアンス・マニュアルの重要な見直し」とありますが、具体的にどのような場合が重要な見直しに該当するのでしょうか。
1.「重要な見直し」に該当するか否かについては、役職員の行動に実質的な影響を与えるものであるかがポイントになります。例えば、金融機関の業務に関係する法令改正に伴うコンプライアンス・マニュアルの見直しであったとしても、法令改正の内容がいわゆる条ずれの範囲に留まるようなものであれば、当該法令改正に伴うコンプライアンス・マニュアルの見直しは「重要」なものとは考えられません。2.他方、法令改正により、役職員が取るべき行動自体が変化するようなもの、具体的には新たな義務が課されるものや、禁止行為が新設される等の場合には、当然コンプライアンス・マニュアルもその内容が見直され、周知が図られなければ、金融機関の業務の適切性が確保できない可能性があると考えられ、こういった場合には「重要な見直し」といえるのではないかと考えられます。3.いずれにしても、個別に事例に即して考える必要があります。
金融庁
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「取引時確認に関する責任者又は担当部署を設置」とありますが、取引時確認に関する独立の部署と責任者を設ける必要がありますか。
取引時確認に関する責任者又は担当部署が果たすべき役割・機能が実効的に発揮されている限り、別の部署との兼任とすることも考えられます。
金融庁
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「疑わしい取引に関する責任者又は担当部署を設置」とありますが、疑わしい取引に対応するための独立の部署と責任者を設ける必要がありますか。
疑わしい取引に関する責任者又は担当部署が果たすべき役割・機能が実効的に発揮されている限り、別の部署との兼任とすることも考えられます。
金融庁
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「反社会的勢力に関する内部・外部情報の収集、分析、更新(情報の追加、削除、変更等)及び一元的管理を行う部署の設置」とありますが、反社会的勢力に対応するための独立の部署を設ける必要がありますか。
反社会的勢力に関する内部・外部情報の収集、分析、更新(情報の追加、削除、変更等)及び一元的管理を行う部署の果たすべき役割・機能が実効的に発揮されている限り、別の部署との兼任とすることも考えられます。
金融庁
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個別の問題点において、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」等の遵守態勢については、「1.組織犯罪等への対応」及び「2.反社会的勢力への対応」において、具体的な検証項目が記載されています。一方で、金融機関に適用のあるその他の法令等の遵守態勢については、具体的な検証項目は記載されていませんが、検証されるのですか。
Ⅲ.個別の問題点における「1.組織犯罪等への対応」及び「2.反社会的勢力への対応」の検証項目は、あくまでも、検査官が法令等遵守態勢を検証する際の「代表的な法令等に関連する着眼点」として、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」等に関連する着眼点を記載しているものです。したがって、金融機関に適用のあるその他の法令等についても、金融機関の業務の健全性及び適切性を確保する観点から、その法令等違反の防止のための適切な態勢が整備・確立され、実際に法令等違反が生じていないかを検証することとなります。
金融庁
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なぜ、リーガル・チェック等態勢をチェックすることとしているのですか。
法令等遵守の徹底を図るためには、金融機関が行う法的なリスクの高い取引や法令等遵守の観点から疑念のある取引等について、事前に検証するための適切な態勢を整備することが重要です。この観点から、金融機関がリーガル・チェック等に係る態勢を自ら整えているかを検証することとしたものです。5.顧客保護等管理態勢
金融庁
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顧客保護等管理において重要なことは何ですか。また、検査においては何を検証しますか。
1.顧客保護等管理については、金融機関の経営陣をはじめとする各役職員が、顧客の視点から自らの業務を捉えなおし、不断に検証し改善する姿勢が重要であり、金融機関に対する公共の信頼は、このような絶えざる見直しの努力の上に成り立つものであることを十分に理解していることが重要です。2.検査においては、・顧客に対する説明が適切かつ十分に行われること、・顧客からの相談・苦情等への対処が適切に処理されること、・顧客の情報が漏洩防止の観点から適切に管理されること、・業務の外部委託時の業務遂行の的確性及び顧客情報の適切な管理、等を確保するための態勢が有効に機能しているかについて検証することとなります。
金融庁
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顧客説明について教えて下さい。法令による説明義務との関係はどのように考えればよいのでしょうか。
顧客説明とは、顧客に対する取引又は商品の説明及び情報提供のことをいいます。顧客説明については、法令による説明義務を果たしていることのほか、金融機関が顧客の視点に立ち自ら定めた顧客保護及び利便の向上に向けた管理の方針(顧客保護等管理方針)等に基づき、顧客説明管理態勢が実効的に機能しているかといった観点からも検証することとなります。
金融庁
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顧客サポート等について教えて下さい。なぜ、苦情処理ではなく顧客サポート等という概念を用いているのですか。
1.顧客サポート等とは、「顧客からの問い合わせ、相談、要望及び苦情(以下「相談・苦情等」という。)への対処」のことです。2.旧マニュアルにおいては、苦情処理としておりましたが、「苦情」という整理では、①現場において「苦情」の概念を狭く捉えてしまうケース②「苦情」の概念を現場で判断することは難しく、本部に伝えるべきものが伝わっていないケース③「苦情」には当たらないものの、経営改善のために経営陣に伝えるべき情報があってもそれが活かされていないケース等が見られたところでした。その結果として、早期の改善策実施により解決できたはずの問題が放置されているという事案が見られていました。3.そこで、顧客サポート等という概念の導入により、「苦情」に限定せず、「相談・苦情等」という顧客からの声にどのように対処するかという観点から検証することとしました。
金融庁
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顧客情報管理について教えて下さい。対象は個人情報に限られますか。
1.顧客情報管理とは、顧客の情報が漏えい防止の観点等から適切に管理されることをいいます。2.個人情報の管理については、個人情報の保護に関する法律や個人情報の保護に関する法律のガイドライン、金融分野における個人情報保護に関するガイドライン等に基づき、個人情報の適切な管理を行うことは、言うまでもありませんが、検証ポイントにおいて、顧客とは、「預金者等を含めた金融機関の業務の利用者」とあるように、顧客情報管理の対象は個人情報に限らず、法人等の情報も含みます。
金融庁
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旧マニュアルにあった顧客管理は、改訂金融検査マニュアル(平成19年2月改訂)ではどのように整理されたのでしょうか。
顧客管理は、旧マニュアルにおいては、「金融機関がテロ資金供与やマネー・ローンダリング等に利用されることを防ぐための顧客の本人確認及び疑わしい取引の届出等を行うことをいう。」とされており、法令等遵守及び事務リスクに分類されていました。一方、改正前の金融検査評定制度においては、「法令等遵守態勢」、「顧客保護等管理態勢」における項目とされていました。改訂金融検査マニュアル(平成19年2月改訂)においては、改めて「顧客管理」として求められる機能を体系に沿って整理し、「法令等遵守態勢」における本人確認(平成25年4月以降は「取引時確認」)と疑わしい取引として位置づけました。
金融庁
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外部委託管理について教えて下さい。オペレーショナル・リスク管理態勢との関係はどのようになっていますか。
1.外部委託管理とは、基本的には、経営陣において管理が必要と考える外部への業務の委託に関する管理のことです。例えば、計算業務、現金輸送、電子計算機に関する事務、文書作成・保管・発送業務、現金自動支払機の保守・点検業務などを第三者に対して委託する場合が考えられます。2.外部委託を行う場合には、委託する業務の規模・特性に応じ、金融機関は顧客保護や当該外部委託業務に内在するオペレーショナル・リスクを適切に管理することが求められます。したがって、外部委託管理については、顧客保護の観点からは顧客保護等管理態勢で検証し、リスク管理の観点からは、オペレーショナル・リスク管理態勢で検証することとなります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
顧客保護については、他のリスク管理などとコンセプトが異なり、部門の設置を求めていませんが、なぜこのようになっているのでしょうか。また、具体的にどのような態勢を念頭においているのですか。
1.顧客保護等管理態勢の確認検査用チェックリストは、現在の金融機関の顧客保護の取組みや組織体制のあり方が様々であること、金融機関による顧客保護のための自主的な取組みのインセンティブを阻害しないようにすること等を踏まえ、柔軟な構造による検証を可能にするため、他のチェックリストとはやや異なる枠組みにしています。例えば、各管理責任者の所属や専門部署の担当者の所属を例示することは、金融機関の取組みを固定化してしまう可能性もあり、ここでは明示していません。したがって、各顧客保護等の管理責任者に求められる役割・機能が実効的に発揮され、問題が生じていないかという観点から検証を行うこととなります。2.なお、例えば、顧客説明管理責任者は、「顧客に対する適切な説明を確保する態勢を整備・確立するための顧客に対する説明の管理全般を統括する責任者」という位置付けとしています。このように、各顧客保護等の管理責任者は、基本的には、他の管理態勢における管理部門の管理者と同等のレベルの役割・責任を担うことを想定しております。6.統合的リスク管理態勢
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
統合的リスク管理、「統合リスク管理」、「統合リスク管理」によらない統合的リスク管理とは何ですか。
1.統合的リスク管理とは、金融機関の直面するリスクに関して、自己資本比率の算定に含まれないリスク(与信集中リスク、銀行勘定の金利リスク等)も含めて、それぞれのリスク・カテゴリー毎(信用リスク、市場リスク、オペレーショナル・リスク等)に評価したリスクを総体的に捉え、金融機関の経営体力(自己資本)と比較・対照することによって、自己管理型のリスク管理を行うことをいいます。2.「統合リスク管理」とは、統合的リスク管理方法のうち各種リスクをVaR等の統一的な尺度で計り、各種リスクを統合(合算)して、金融機関の経営体力(自己資本)と対比することによって管理するものをいいます。3.「統合リスク管理」によらない統合的リスク管理とは、例えば、各種リスクを個別の方法で質的又は量的に評価した上で、金融機関全体のリスクの程度を判断し、金融機関の経営体力(自己資本)と対照することによって管理するものをいいます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
複雑又は高度なリスク評価方法が、全ての金融機関にとって適切な方法であるとは限らないのは、なぜですか。
1.金融機関が採用すべきリスク評価方法の種類や水準は、金融機関の戦略目標、業務の多様性及び直面するリスクの複雑さによって決められるべきものです。2.例えば、単純なリスクしか抱えていない金融機関が先進的な手法を採用することにより、かえって実効的なリスク管理ができなくなるおそれがありますので、リスクをコントロールする上で自らが活用しやすい手法によって管理すべきであると考えます。3.また、金融機関のリスク・プロファイルによっては、複雑又は高度なリスク評価方法を採用するより、単純なリスク評価方法を採用した場合のほうがより高度なリスク管理を実現できる場合があると考えます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
金融機関が採用しているリスク評価方法の複雑さ及び高度化の水準に見合った適切な統合的リスク管理態勢とはどういうことですか。
1.複雑又は高度なリスク評価方法を採用する場合、経営陣及び管理者は、その複雑又は高度なリスク評価方法を十分に理解し、その弱点・限界を踏まえたリスク管理を行う必要があります。2.また、採用した評価方法(評価手法、前提条件等)の妥当性について、定期的に又は必要に応じて随時、理論面及び実証面から検証を実施する態勢を整備する必要もあります。
金融庁
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統合的リスク管理に関して記載すべき項目を全て包含する独立した「統合的リスク管理方針」及び「統合的リスク管理規程」を策定する必要はなく、複数の方針等において網羅的に定められていればよい、との理解でよいですか。
1.複数の方針によって統合的リスク管理方針を代替する場合はありえます。その場合、各方針が網羅的かつ有機的に一体の統合的リスク管理方針として機能して、自己資本比率の算定に含まれないリスクも含め金融機関が直面するリスクが総体的に捉えられ、自己管理型のリスク管理を行う上で適切な方針となっているかを検証します。2.また、内部規程(統合的リスク管理規程)についても同様です。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
内部監査実施要領に記載すべき項目として例示している項目(Ⅰ.2.⑦)と、統合リスク計測手法を用いている場合における内部監査の監査範囲として列挙している項目(Ⅲ.1.②)との関係はどのようになっているのですか。
1.前者は、統合的リスク管理における内部監査の監査範囲の例示を記載しています。後者は、統合リスク計測手法を用いている場合の内部監査の監査範囲を記載しています。2.前者については、例示であることから、内部監査の範囲とするか否かは金融機関が、その必要性について検討し判断することになります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
統合的リスク管理システムとは特別なシステムが必要なのですか。
1.統合的リスク管理システムとは、信用リスク、市場リスク、オペレーショナル・リスク等のさまざまなリスクを業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに応じて統合的に管理するシステムのことをいい、このシステムには中央集中型の汎用機システムや分散系システムのほか、EUC(エンド・ユーザー・コンピューティング)によるものも含まれます。2.したがって、このシステムについては各金融機関の業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに応じた適切なシステムであることは必要ですが、全ての金融機関に大規模かつ高度化・精緻化された特別なシステムが必要となるわけではなく、例えば、パソコンの表計算ソフト等を利用した統合的リスク管理システムであっても、十分にその機能を充たし得る場合があると考えられます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「リスク評価手法」と「リスク計測手法」とはどのような違いがあるのでしょうか。
1.「リスク評価手法」とは、リスクの性質・傾向性、特性、大きさについて質的又は量的に分析し、損失の程度を判断する手法を指しています。2.他方、「リスク計測手法」とは、リスク評価手法の中でもリスクを量的に分析し、損失の程度を判断する手法を指しています。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「統合的リスク管理態勢に関する検証の考え方」の位置づけはどのようになっているのですか。
「統合的リスク管理態勢に関する検証の考え方」は、統合的リスク管理態勢を検証するに際しての運用方針を示したものです。今後、当面の間はこの運用方針に基づいて実際の検証が行われることになります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「統合的リスク管理態勢に関する検証の考え方」における「より大規模かつ複雑なリスク」とは何ですか。
1.「より大規模なリスク」は、金融機関全体のリスクに占める割合と市場規模に対する相対的大きさによって判断されます。2.「複雑なリスク」については、リスク・プロファイルによって総合的に判断されます。例えば、オプション等のデリバティブの複雑さをもって直ちにリスクが複雑であるとはいえないことに留意が必要です。7.自己資本管理態勢
金融庁
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自己資本管理とは何ですか。
自己資本管理とは、自己資本充実に関する施策の実施、自己資本充実度の評価及び自己資本比率の算定を行うことです。そのうち、「自己資本充実度の評価」とは、金融機関の直面するリスクに関して、自己資本比率の算定に含まれないリスク(与信集中リスク、銀行勘定の金利リスク等)も含めて、それぞれのリスク・カテゴリー毎に評価したリスクを総体的に捉えたものを、金融機関の経営体力(自己資本)と比較・対照することによって、直面するリスクに見合った十分な自己資本を確保しているかを定性的及び定量的に評価することをいいます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
自己資本管理態勢の検証はどのように行われますか。
1.自己資本管理態勢については、経営方針等によってその管理方法は様々であり、例えば資本計画等(戦略目標に照らして望ましい自己資本水準、必要となる資本調達額、適切な資本調達方法等が記載されている計画書)の立案・実行、自己資本充実度の評価、自己資本比率の算定、資本配賦運営等、役割が多岐にわたることから、①複数の方針・内部規程が策定され、複数の部門が役割分担している場合や、②統合的リスク管理部門が自己資本管理の役割も担っている場合もあります。2.したがって、自己資本管理態勢の検証に当たっては、各金融機関の管理方法等の実態を踏まえた上で検証する必要があります。例えば、①複数の部門が自己資本管理業務を連携して行っている場合には、それぞれの方針・内部規程及び部門の役割が整合的であり、それぞれの自己資本管理プロセスが有機的に機能しているかを検証し、また、②統合的リスク管理部門が自己資本充実度評価の役割を担っている場合は、自己資本管理態勢の自己資本充実度評価の検証項目と統合的リスク管理態勢の検証項目を一体として検証し、自己資本充実に関する問題点は自己資本管理態勢の問題点として検証します。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「統合的リスク管理部門が自己資本充実度評価の役割を担っている場合は、自己資本管理態勢の自己資本充実度評価の検証項目と統合的リスク管理態勢の検証項目を一体として検証し、自己資本充実に関する問題点は自己資本管理態勢の問題点として検証する」とありますが、統合的リスク管理態勢の検証項目で、(自己資本管理態勢の自己資本充実度評価の検証項目と)一体として検証する範囲とは、具体的にどの部分を指しているのですか。
統合的リスク管理態勢の検証に当たっては、統合的リスク管理態勢の検証項目に加えて、自己資本管理態勢の確認検査用チェックリストに記載されている自己資本充実度の評価に係る全ての検証項目についても検証を行います。この際、自己資本充実度の評価に係る検証項目について問題点が認められた場合には、自己資本管理態勢の問題点として管理態勢を評価することになります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
「自己資本管理部門の態勢を整備し、牽制機能を発揮させるための施策を実施しているか」とは、何に対するどのような牽制機能ですか。
他の部門に報告を求める、営業推進部門等の干渉を受けずに自己資本充実度の評価・モニタリングを行うなど、主にⅡ.2以降に記載している内容を適切に機能させるための牽制機能のことです。8.信用リスク管理態勢
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
信用リスクとは何ですか。
信用リスクとは、信用供与先の財務状況の悪化等により、資産(オフ・バランス資産を含む。)の価値が減少ないし消失し、金融機関が損失を被るリスクのことです。このうち、特に海外向け信用供与について、与信先の属する国の外貨事情や政治・経済情勢等により金融機関が損失を被るリスクのことを、カントリー・リスクといいます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
改訂金融検査マニュアルでは、「クレジット・ポリシー」に関する記述がありませんが、旧マニュアルにおける「クレジット・ポリシー」の概念は、改訂金融検査マニュアルにおいて、どこに組み込まれていると考えればよいのですか。
「クレジット・ポリシー」の概念は、「信用リスク管理方針」や「信用リスク管理規程」に包摂されていると考えて差し支えありません。なお、「クレジット・ポリシー」に方針や規程の内容が既に記載されているのであれば、「クレジット・ポリシー」をもって方針や規程と位置づけることも考えられます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
信用リスク管理に関するシステムとしては、「与信に係る勘定系システム」、「信用格付の実施・管理システム」、「信用リスク量の算出・分析システム」、「信用リスク・アセットの算出システム」等が存在しますが、改訂金融検査マニュアルにおける「信用リスク管理システム」とは具体的にどのようなシステムを指すのですか。
「信用リスク管理システム」とは、信用リスク管理に関係するシステム全般(エンド・ユーザー・コンピューティングによるものを含む)を指しています。具体的にどのようなシステムであるかは、金融機関により異なりますが、全体として業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに見合った信頼度の高いシステムを整備することが必要であると考えられます。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
信用リスク管理部門にはどのような部門がありますか。旧マニュアルにあった「与信監査部門」について記載されていないのはなぜですか。
1.信用リスク管理部門としては、①審査部門、②与信管理部門、③問題債権の管理部門の3つの部門があり、これらを総称して信用リスク管理部門と位置づけています。なお、これらは必ずしも組織形態としての部門である必要はなく、機能として有効であるかを検証することとしています。2.また、旧マニュアルにあった与信監査という表記は、金融機関によって与信監査という言葉の捉え方が区々となっていたため削除しました。今般の改訂では、ミドルオフィス的機能としての与信管理部門の機能と、内部監査部門の機能とを整理し明確化しています。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
シンジケート・ローンの記載を追加した趣旨及び検証に際しての留意点は何ですか。
1.レンダーである金融機関において、自らが与信管理を行うために必要な情報をアレンジャー及びエージェントから入手する態勢になっておらず、リスク管理が結果的に不十分となっている例が見受けられています(平成17検査事務年度金融検査指摘事例集Ⅴ.2.)参照)。そのため、今般の改訂では、信用リスク管理態勢に、例示として記載しました。2.<顧客保護等管理態勢における検証〔顧客Ⅲ.2.④〕>例えば、アレンジャー業務における情報提供態勢について、紛争の未然防止のための態勢が整備されているかが検証項目となります。3.<法令等遵守態勢における検証〔法令等Ⅲ.4.①〕>例えば、同一スキームに、アレンジャー兼レンダーなど複数の立場で関与する場合等における利益相反性についての検討が必要な事案として、慎重な検討がなされる態勢となっているかが検証項目となります。
金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/20170530.pdf
海外プロジェクトファイナンスに関するシンジケートローンに関しては、メガバンクや一部の地域銀行において、積極的に取り組む動きが認められます。海外プロジェクトファイナンスに関する融資審査・管理に関して、どのような点に留意すればよいですか。
1.一般に、海外プロジェクトファイナンス(以下「海外PF」という。)に関するシンジケートローンには、①多額の資金を必要とする特定の事業に対して、複数の金融機関から融資が実行される、②案件の現地での状況の把握、事業の収益性、契約や各国の法制の理解などリスク分析や案件審査において、高度なノウハウが必要となる、といった特色があり、こうした点に留意して融資審査・管理を行う必要があります。2.特に地域銀行が海外PFに参加する場合は、自らのリスク分析能力を不断に高め、適切なリスク管理を行うため、まずは、十分な情報収集が重要となります。情報収集に当たっては、地域銀行自らが、そのリソースの中で最善を尽くすことが求められますが、海外PFについてより知見を有するエージェント行等から可能な限り多くの情報提供(例えば、プロジェクト概要のみならずエージェント行等のリスク分析・評価についての情報提供)を受けることも考えられます。その上で、以下の点について、しっかりと取り組む必要があると考えられます。①(エージェント行等から得た情報も参考にしつつ)当該プロジェクトの中身やリスクを、自ら的確に理解すること。②カントリーリスクや与信集中リスク等を踏まえたストレステスト等を実施し、海外PFのリスクが、自らの財務の健全性へ与える影響を分析すること。③(エージェント行等から得た情報も参考にしつつ)原契約書等の内容について、自ら分析する能力の向上を図ること。3.当局は、海外PFに取り組む金融機関のリスク管理態勢について効果的な検証を実施すべく、より知見を有するエージェント行等における管理手法を参考としつつ、参加行における海外PFのリスク管理態勢について検証を行います。具体的には、①地域銀行が参加する海外PFに関して、エージェント行等を中心に、日頃のモニタリングを通じて定期的に情報を収集します。②地域銀行に対しては、日頃のモニタリングを通じて統合的リスク管理態勢の実態を把握し、必要に応じてターゲット検査を実施することとしております。その際、海外PFに参加する地域銀行に対しては、(ⅰ)どのように情報収集を行い、それを基にどのように海外PFのリスク分析・評価を行っているか、(ⅱ)海外PFのリスクが自らの財務の健全性に与える影響について、どのように分析しているか等、多面的に態勢整備の状況について検証を行います。
金融庁
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「大口与信先」の定義はありますか。例えば、オフサイト・モニタリングにおける定義と同一のものとすることも差し支えないですか。
1.金融機関の経営に対して大きな影響を及ぼす可能性のある大口与信先がどのような先であるかは、業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに応じて金融機関が自ら定義すべきものであり、各金融機関において定められた合理的な基準により抽出・把握することとなります。2.金融機関が検討した結果として、オフサイト・モニタリングと同一の定義になるということは差し支えありませんが、オフサイト・モニタリングと同一の定義であることをもって、自動的に適切と判断されるわけではありません。
金融庁
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標準的手法、内部格付手法の検証項目リストと金融庁告示等との関係を教えて下さい。
1.標準的手法の検証項目リスト及び内部格付手法の検証項目リストについては、検査官が標準的手法採用行や内部格付手法採用行における信用リスク管理態勢を具体的に確認するためのチェックリストとして、「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(平成18年金融庁告示第19号)の内容を整理したものです。2.したがって、検査においては、本検証項目リストを参考にして、告示及び「告示に関するQ&A」等に基づき検証を行うこととなります。9.資産査定管理態勢
金融庁
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資産査定管理とは何ですか。
1.資産査定とは、金融機関の保有する資産を個別に検討して、回収の危険性又は価値の毀損の危険性の度合いに従って区分することであり、預金者の預金などがどの程度安全確実な資産に見合っているか、言い換えれば、資産の不良化によりどの程度の危険にさらされているかを判定するものです。なお、金融機関自らが行う資産査定のことを「自己査定」といいます。2.自己査定は、金融機関が信用リスクを管理するための手段であるとともに、適正な償却・引当を行うための準備作業となるものであり、この自己査定結果に基づき、貸倒等の実態を踏まえ、債権等の将来の予想損失額等を適時かつ適正に見積もり、償却・引当を行うこととなります。このような自己査定から償却・引当を行うまでの一連の管理を資産査定管理といいます。
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プロジェクト・ファイナンスの査定における「見做し債務者区分」の定義はどのようなものですか。また、「見做し債務者区分」を付す理由は何ですか。
1.「見做し債務者区分」とは、プロジェクトをあたかも債務者のように見做し、これに債務者区分を付すことです。2.現状でも多くの金融機関は、プロジェクト・ファイナンスに対して一般事業法人と同様に債務者区分を付しています。基本的にこの場合が見做し債務者区分を付すということに当たります。3.なお、今回の改訂はプロジェクト・ファイナンスにおける回収の危険性の度合いをより明瞭化する観点からのものであり、基本的考え方を変更するものではありません。
金融庁
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プロジェクト・ファイナンス債権の回収の危険性の度合いの検証に用いるLTV、DSCRとは何ですか。
1.LTV(ローン・トゥー・バリュー)とは、借り入れ等の負債金額を資産価値で割った負債比率のことをいい、この数値が低いほど、価格変動に対する対応力が高く、損失の発生する可能性は低いとされています。2.DSCR(デット・サービス・カバレッジ・レシオ)とは、各年度毎の元利返済前のキャッシュ・フロー、すなわち純収益が当該年度の元利支払所要額の何倍かを表す比率のことをいい、この数値が高いほど、ローンに係る元利金支払に関する安全性が高いことを示すとされています。3.なお、今回の改訂では、プロジェクト・ファイナンス債権の回収の危険性の評価に際して、現時点において、一般的に認識されている指標である、LTV、DSCRをはじめ、合理的な手法で行う必要があることを明記したところです。
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