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やっと気を取り直して、涙ながらに、その袖を捉える女、
やっと<ruby>気<rt>き</rt></ruby>を<ruby>取<rt>と</rt></ruby>り<ruby>直<rt>なお</rt></ruby>して、<ruby>涙<rt>なみだ</rt></ruby>ながらに、その<ruby>袖<rt>そで</rt></ruby>を<ruby>捉<rt>とら</rt></ruby>える<ruby>女<rt>おんな</rt></ruby>、
何も放射線を見るために考案されたものではなく、
<ruby>何<rt>なに</rt></ruby>も<ruby>放射線<rt>ほうしゃせん</rt></ruby>を<ruby>見<rt>み</rt></ruby>るために<ruby>考案<rt>こうあん</rt></ruby>されたものではなく、
たとえば収賄の嫌疑で予審中でありながら
たとえば<ruby>収賄<rt>しゅうわい</rt></ruby>の<ruby>嫌疑<rt>けんぎ</rt></ruby>で<ruby>予審<rt>よしん</rt></ruby><ruby>中<rt>ちゅう</rt></ruby>でありながら
先生の啓示は、まさに金玉の教えと思う。
<ruby>先生<rt>せんせい</rt></ruby>の<ruby>啓示<rt>けいじ</rt></ruby>は、まさに<ruby>金玉<rt>きんぎょく</rt></ruby>の<ruby>教<rt>おし</rt></ruby>えと<ruby>思<rt>おも</rt></ruby>う。
「貝を吹け」と、いいつけた。
「<ruby>貝<rt>かい</rt></ruby>を<ruby>吹<rt>ふ</rt></ruby>け」と、いいつけた。
無論彼であってもいつも趣味判断ばかり下していることは出来ない。
<ruby>無論<rt>むろん</rt></ruby><ruby>彼<rt>かれ</rt></ruby>であってもいつも<ruby>趣味<rt>しゅみ</rt></ruby><ruby>判断<rt>はんだん</rt></ruby>ばかり<ruby>下<rt>くだ</rt></ruby>していることは<ruby>出来<rt>でき</rt></ruby>ない。
似たようなことがあるものだ、
<ruby>似<rt>に</rt></ruby>たようなことがあるものだ、
その沼のほとりへたどりつきました。
その<ruby>沼<rt>とう</rt></ruby>のほとりへたどりつきました。
立合うつもりでなく殺すつもり。
<ruby>立合<rt>たちあ</rt></ruby>うつもりでなく<ruby>殺<rt>ころ</rt></ruby>すつもり。
いつまでも面は上げないのである。
いつまでも<ruby>面<rt>おもて</rt></ruby>は<ruby>上<rt>あ</rt></ruby>げないのである。
推察の通り先客がいた。
<ruby>推察<rt>すいさつ</rt></ruby>の<ruby>通<rt>とお</rt></ruby>り<ruby>先客<rt>せんきゃく</rt></ruby>がいた。
どうも明智らしくないので、
どうも<ruby>明智<rt>あけち</rt></ruby>らしくないので、
馴れた様子で、バタバタと不思議な作業が始まります。
<ruby>馴<rt>な</rt></ruby>れた<ruby>様子<rt>ようす</rt></ruby>で、バタバタと<ruby>不思議<rt>ふしぎ</rt></ruby>な<ruby>作業<rt>さぎょう</rt></ruby>が<ruby>始<rt>はじ</rt></ruby>まります。
外からかぎをかけてしまいました。
<ruby>外<rt>そと</rt></ruby>からかぎをかけてしまいました。
松住町まで行くと浅草下谷方面はまだ一面に燃えていて黒煙と焔の海である。
<ruby>松<rt>まつ</rt></ruby><ruby>住<rt>ず</rt></ruby><ruby>町<rt>まち</rt></ruby>まで<ruby>行<rt>い</rt></ruby>くと<ruby>浅草<rt>あさくさ</rt></ruby><ruby>下谷<rt>したや</rt></ruby><ruby>方面<rt>ほうめん</rt></ruby>はまだ<ruby>一<rt>いち</rt></ruby><ruby>面<rt>めん</rt></ruby>に<ruby>燃<rt>も</rt></ruby>えていて<ruby>黒<rt>くろ</rt></ruby><ruby>煙<rt>けむり</rt></ruby>と<ruby>焔<rt>ほのお</rt></ruby>の<ruby>海<rt>うみ</rt></ruby>である。
小生が何者であるかは、
<ruby>小生<rt>しょうせい</rt></ruby>が<ruby>何者<rt>なにもの</rt></ruby>であるかは、
ちゃんと知っているのかもしれません。
ちゃんと<ruby>知<rt>し</rt></ruby>っているのかもしれません。
磨きをかけたものですが、
<ruby>磨<rt>みが</rt></ruby>きをかけたものですが、
火の玉だの、妙な模様がかいてあるものだった。
<ruby>火<rt>ひ</rt></ruby>の<ruby>玉<rt>たま</rt></ruby>だの、<ruby>妙<rt>みょう</rt></ruby>な<ruby>模様<rt>もよう</rt></ruby>がかいてあるものだった。
かれは、そこまで考えると、
かれは、そこまで<ruby>考<rt>かんが</rt></ruby>えると、
すなわち地震のような現象と、
すなわち<ruby>地震<rt>じしん</rt></ruby>のような<ruby>現象<rt>げんしょう</rt></ruby>と、
その同じような態度や様子、
その<ruby>同<rt>おな</rt></ruby>じような<ruby>態度<rt>たいど</rt></ruby>や<ruby>様子<rt>ようす</rt></ruby>、
母と妹がみまいに来たが、
<ruby>母<rt>はは</rt></ruby>と<ruby>妹<rt>いもうと</rt></ruby>がみまいに<ruby>来<rt>き</rt></ruby>たが、
何でもあまり犬が多くなって新聞に書き立てられた年があったよ。
<ruby>何<rt>なん</rt></ruby>でもあまり<ruby>犬<rt>いぬ</rt></ruby>が<ruby>多<rt>おお</rt></ruby>くなって<ruby>新聞<rt>しんぶん</rt></ruby>に<ruby>書<rt>か</rt></ruby>き<ruby>立<rt>た</rt></ruby>てられた<ruby>年<rt>とし</rt></ruby>があったよ。
そもそもどうした訳であろう。
そもそもどうした<ruby>訳<rt>わけ</rt></ruby>であろう。
そのうちにだれいうとなく坊っちゃんもだいぶお悪いという噂が立って、
そのうちにだれいうとなく<ruby>坊<rt>ぼ</rt></ruby>っちゃんもだいぶお<ruby>悪<rt>わる</rt></ruby>いという<ruby>噂<rt>うわさ</rt></ruby>が<ruby>立<rt>た</rt></ruby>って、
それを合図のように、栓穴から鼠が籠の中にとびだしてきた。
それを<ruby>合図<rt>あいず</rt></ruby>のように、<ruby>栓<rt>せん</rt></ruby><ruby>穴<rt>あな</rt></ruby>から<ruby>鼠<rt>ねずみ</rt></ruby>が<ruby>籠<rt>かご</rt></ruby>の<ruby>中<rt>なか</rt></ruby>にとびだしてきた。
うすぐらいお堂の中には、
うすぐらいお<ruby>堂<rt>どう</rt></ruby>の<ruby>中<rt>なか</rt></ruby>には、
カナダのグース・ベイ飛行場にて、
カナダのグース・ベイ<ruby>飛行場<rt>ひこうじょう</rt></ruby>にて、
親きょうだいより、貯金のほうが大事なんだろう」
<ruby>親<rt>おや</rt></ruby>きょうだいより、<ruby>貯金<rt>ちょきん</rt></ruby>のほうが<ruby>大事<rt>だいじ</rt></ruby>なんだろう」
惜気もなく津田の眼をはなやかに照した。
<ruby>惜気<rt>おしげ</rt></ruby>もなく<ruby>津田<rt>つだ</rt></ruby>の<ruby>眼<rt>め</rt></ruby>をはなやかに<ruby>照<rt>てら</rt></ruby>した。
不意に陥穽の釦を押して、このわしを罠にかけたという次第じゃ。
<ruby>不意<rt>ふい</rt></ruby>に<ruby>陥穽<rt>おとしあな</rt></ruby>の<ruby>釦<rt>ぼたん</rt></ruby>を<ruby>押<rt>お</rt></ruby>して、このわしを<ruby>罠<rt>わな</rt></ruby>にかけたという<ruby>次第<rt>しだい</rt></ruby>じゃ。
本当においしいところだけ選んで、差し上げているのに、
<ruby>本当<rt>ほんとう</rt></ruby>においしいところだけ<ruby>選<rt>えら</rt></ruby>んで、<ruby>差<rt>さ</rt></ruby>し<ruby>上<rt>あ</rt></ruby>げているのに、
「野郎、もう逃げ道はねえはずだ」
「<ruby>野郎<rt>やろう</rt></ruby>、もう<ruby>逃<rt>に</rt></ruby>げ<ruby>道<rt>みち</rt></ruby>はねえはずだ」
彼は立ち上がって、そして尋ねた。
<ruby>彼<rt>あれ</rt></ruby>は<ruby>立<rt>た</rt></ruby>ち<ruby>上<rt>あ</rt></ruby>がって、そして<ruby>尋<rt>たず</rt></ruby>ねた。
もっともこれは僕だけです。
もっともこれは<ruby>僕<rt>ぼく</rt></ruby>だけです。
「ばかなことを言いなさい。
「ばかなことを<ruby>言<rt>い</rt></ruby>いなさい。
負けずに足が早くなった。
<ruby>負<rt>ま</rt></ruby>けずに<ruby>足<rt>あし</rt></ruby>が<ruby>早<rt>はや</rt></ruby>くなった。
いわば一門同様なお方が
いわば<ruby>一門<rt>いちもん</rt></ruby><ruby>同様<rt>どうよう</rt></ruby>なお<ruby>方<rt>かた</rt></ruby>が
全体その周囲は中等以下の肉だ。
<ruby>全体<rt>ぜんたい</rt></ruby>その<ruby>周囲<rt>まわり</rt></ruby>は<ruby>中等<rt>ちゅうとう</rt></ruby><ruby>以下<rt>いか</rt></ruby>の<ruby>肉<rt>にく</rt></ruby>だ。
身動きもせず立ちすくんでいましたが、
<ruby>身動<rt>みうご</rt></ruby>きもせず<ruby>立<rt>た</rt></ruby>ちすくんでいましたが、
奥さんの御依頼によりですね。
<ruby>奥<rt>おく</rt></ruby>さんの<ruby>御<rt>ご</rt></ruby><ruby>依頼<rt>いらい</rt></ruby>によりですね。
二人がたがいに別々で暮らしてゆけないということは、
<ruby>二人<rt>ふたり</rt></ruby>がたがいに<ruby>別々<rt>べつべつ</rt></ruby>で<ruby>暮<rt>く</rt></ruby>らしてゆけないということは、
わかりにくければこれを絵画にとって見れば
わかりにくければこれを<ruby>絵画<rt>かいが</rt></ruby>にとって<ruby>見<rt>み</rt></ruby>れば
わけを訊かれても、彼女は正直にみな話せなかった。
わけを<ruby>訊<rt>き</rt></ruby>かれても、<ruby>彼女<rt>かのじょ</rt></ruby>は<ruby>正直<rt>しょうじき</rt></ruby>にみな<ruby>話<rt>はな</rt></ruby>せなかった。
「少しきたないようだぜ」
「<ruby>少<rt>すこ</rt></ruby>しきたないようだぜ」
「これは、夢を見ているのではないか」
「これは、<ruby>夢<rt>ゆめ</rt></ruby>を<ruby>見<rt>み</rt></ruby>ているのではないか」
敗風ひとたび陣に荒ぶや、今暁からの味方の浮足は見るにたえないものだった。
<ruby>敗<rt>はい</rt></ruby><ruby>風<rt>ふう</rt></ruby>ひとたび<ruby>陣<rt>じん</rt></ruby>に<ruby>荒<rt>すさ</rt></ruby>ぶや、<ruby>今暁<rt>こんぎょう</rt></ruby>からの<ruby>味方<rt>みかた</rt></ruby>の<ruby>浮足<rt>うきあし</rt></ruby>は<ruby>見<rt>み</rt></ruby>るにたえないものだった。
主人は、やきもちやきだと
<ruby>主人<rt>しゅじん</rt></ruby>は、やきもちやきだと
たしかに、このへんから聞こえてきたのですが……。」
たしかに、このへんから<ruby>聞<rt>き</rt></ruby>こえてきたのですが……。」
「それでは社長は物に動じませんかと訊いたのでございます」
「それでは<ruby>社長<rt>しゃちょう</rt></ruby>は<ruby>物<rt>もの</rt></ruby>に<ruby>動<rt>どう</rt></ruby>じませんかと<ruby>訊<rt>き</rt></ruby>いたのでございます」
卵のからをセルロイドでつくって、
<ruby>卵<rt>たまご</rt></ruby>のからをセルロイドでつくって、
どんなに身分が違いましょうとも、年合いが違いましょうとも、
どんなに<ruby>身分<rt>みぶん</rt></ruby>が<ruby>違<rt>ちが</rt></ruby>いましょうとも、<ruby>年<rt>とし</rt></ruby><ruby>合<rt>あ</rt></ruby>いが<ruby>違<rt>ちが</rt></ruby>いましょうとも、
雁の列のように刺繍されてある古めかしい半襟であった。
<ruby>雁<rt>がん</rt></ruby>の<ruby>列<rt>れつ</rt></ruby>のように<ruby>刺繍<rt>ししゅう</rt></ruby>されてある<ruby>古<rt>ふる</rt></ruby>めかしい<ruby>半襟<rt>はんえり</rt></ruby>であった。
頭の後ろの形がどうなっているかも思わずに
<ruby>頭<rt>あたま</rt></ruby>の<ruby>後<rt>うし</rt></ruby>ろの<ruby>形<rt>かたち</rt></ruby>がどうなっているかも<ruby>思<rt>おも</rt></ruby>わずに
校長もあの路の岐れ目で待っている。
<ruby>校長<rt>こうちょう</rt></ruby>もあの<ruby>路<rt>みち</rt></ruby>の<ruby>岐<rt>わか</rt></ruby>れ<ruby>目<rt>め</rt></ruby>で<ruby>待<rt>ま</rt></ruby>っている。
やがて充分に身仕舞が終ると、
やがて<ruby>充分<rt>じゅうぶん</rt></ruby>に<ruby>身<rt>み</rt></ruby><ruby>仕舞<rt>しまい</rt></ruby>が<ruby>終<rt>おわ</rt></ruby>ると、
「どうして、このところ急に、あんな自暴のやん八になったのか」
「どうして、このところ<ruby>急<rt>きゅう</rt></ruby>に、あんな<ruby>自暴<rt>やけ</rt></ruby>のやん<ruby>八<rt>はち</rt></ruby>になったのか」
そして困難を伴っていたことは、
そして<ruby>困難<rt>こんなん</rt></ruby>を<ruby>伴<rt>ともな</rt></ruby>っていたことは、
判然したところのある奥さんは、
<ruby>判然<rt>はきはき</rt></ruby>したところのある<ruby>奥<rt>おく</rt></ruby>さんは、
あれが手ぬるいから、第二の長州征伐が持上って、
あれが<ruby>手<rt>て</rt></ruby>ぬるいから、<ruby>第<rt>だい</rt></ruby><ruby>二<rt>に</rt></ruby>の<ruby>長州<rt>ちょうしゅう</rt></ruby><ruby>征伐<rt>せいばつ</rt></ruby>が<ruby>持<rt>もち</rt></ruby><ruby>上<rt>あが</rt></ruby>って、
火にかざしている手や、
<ruby>火<rt>ひ</rt></ruby>にかざしている<ruby>手<rt>て</rt></ruby>や、
帰りは十時ちかくになるが、
<ruby>帰<rt>かえ</rt></ruby>りは<ruby>十<rt>じゅう</rt></ruby><ruby>時<rt>じ</rt></ruby>ちかくになるが、
おまえのためならどんなことでもしてやるから、そう云ってたち去った。
おまえのためならどんなことでもしてやるから、そう<ruby>云<rt>ゆ</rt></ruby>ってたち<ruby>去<rt>さ</rt></ruby>った。
自分の人格に対して申し訳がないような気がした。
<ruby>自分<rt>じぶん</rt></ruby>の<ruby>人格<rt>じんかく</rt></ruby>に<ruby>対<rt>たい</rt></ruby>して<ruby>申<rt>もう</rt></ruby>し<ruby>訳<rt>わけ</rt></ruby>がないような<ruby>気<rt>き</rt></ruby>がした。
そのレンガを、ぬいてしまうと、おくに、かぎ穴が見えました。
そのレンガを、ぬいてしまうと、おくに、かぎ<ruby>穴<rt>あな</rt></ruby>が<ruby>見<rt>み</rt></ruby>えました。
贅沢を憎むことは知的の嫌悪ではないだろう。
<ruby>贅沢<rt>ぜいたく</rt></ruby>を<ruby>憎<rt>にく</rt></ruby>むことは<ruby>知的<rt>ちてき</rt></ruby>の<ruby>嫌悪<rt>けんお</rt></ruby>ではないだろう。
かれは三十前後の温良な人物である。
かれは<ruby>三<rt>さん</rt></ruby><ruby>十<rt>じゅう</rt></ruby><ruby>前後<rt>ぜんご</rt></ruby>の<ruby>温良<rt>おんりょう</rt></ruby>な<ruby>人物<rt>じんぶつ</rt></ruby>である。
七年前のすさまじい焼け野原も
<ruby>七<rt>なな</rt></ruby><ruby>年<rt>ねん</rt></ruby><ruby>前<rt>まえ</rt></ruby>のすさまじい<ruby>焼<rt>や</rt></ruby>け<ruby>野原<rt>のはら</rt></ruby>も
橋間の月に平次の顔をすかしました。
<ruby>橋間<rt>きょうかん</rt></ruby>の<ruby>月<rt>つき</rt></ruby>に<ruby>平次<rt>へいじ</rt></ruby>の<ruby>顔<rt>かお</rt></ruby>をすかしました。
「以前とちがって、長吉も今が勉強ざかりだしね
「<ruby>以前<rt>いぜん</rt></ruby>とちがって、<ruby>長吉<rt>ちょうきち</rt></ruby>も<ruby>今<rt>いま</rt></ruby>が<ruby>勉強<rt>べんきょう</rt></ruby>ざかりだしね
つまり、その高位高官のご老人に化けていただいたのです。
つまり、その<ruby>高位<rt>こうい</rt></ruby><ruby>高官<rt>こうかん</rt></ruby>のご<ruby>老人<rt>ろうじん</rt></ruby>に<ruby>化<rt>ば</rt></ruby>けていただいたのです。
考えると嫁に来たのは間違っている。
<ruby>考<rt>かんが</rt></ruby>えると<ruby>嫁<rt>とつ</rt></ruby>に<ruby>来<rt>き</rt></ruby>たのは<ruby>間違<rt>まちが</rt></ruby>っている。
信頼すべきものは、親が在るばかりだ。
<ruby>信頼<rt>しんらい</rt></ruby>すべきものは、<ruby>親<rt>おや</rt></ruby>が<ruby>在<rt>あ</rt></ruby>るばかりだ。
その性質をすっかり受継いだように、
その<ruby>性質<rt>せいしつ</rt></ruby>をすっかり<ruby>受継<rt>うけつ</rt></ruby>いだように、
また、次郎に対しても愛情を感じないわけではないが、
また、<ruby>次郎<rt>じろう</rt></ruby>に<ruby>対<rt>たい</rt></ruby>しても<ruby>愛情<rt>あいじょう</rt></ruby>を<ruby>感<rt>かん</rt></ruby>じないわけではないが、
信三は軽くうなずいて自分のものに火をつけた、
<ruby>信三<rt>しんぞう</rt></ruby>は<ruby>軽<rt>かる</rt></ruby>くうなずいて<ruby>自分<rt>じぶん</rt></ruby>のものに<ruby>火<rt>ひ</rt></ruby>をつけた、
愚かな上に盲目的な親の愛までも暴露してお目にかけることも恥ずかしくて、
<ruby>愚<rt>おろ</rt></ruby>かな<ruby>上<rt>うえ</rt></ruby>に<ruby>盲目的<rt>もうもくてき</rt></ruby>な<ruby>親<rt>おや</rt></ruby>の<ruby>愛<rt>あい</rt></ruby>までも<ruby>暴露<rt>ばくろ</rt></ruby>してお<ruby>目<rt>め</rt></ruby>にかけることも<ruby>恥<rt>は</rt></ruby>ずかしくて、
扱い方にほとほと手を焼いて、どうしたらよいのか分らず、
<ruby>扱<rt>あつか</rt></ruby>い<ruby>方<rt>かた</rt></ruby>にほとほと<ruby>手<rt>て</rt></ruby>を<ruby>焼<rt>や</rt></ruby>いて、どうしたらよいのか<ruby>分<rt>わか</rt></ruby>らず、
志保はそこでしずかに座を立った。
<ruby>志保<rt>しほ</rt></ruby>はそこでしずかに<ruby>座<rt>ざ</rt></ruby>を<ruby>立<rt>た</rt></ruby>った。
「お母さんは今ちょっと出かけていますから」
「お<ruby>母<rt>かあ</rt></ruby>さんは<ruby>今<rt>いま</rt></ruby>ちょっと<ruby>出<rt>で</rt></ruby>かけていますから」
しかしその向うの質屋の店は安田銀行に変っている。
しかしその<ruby>向<rt>むこ</rt></ruby>うの<ruby>質屋<rt>しちや</rt></ruby>の<ruby>店<rt>みせ</rt></ruby>は<ruby>安田<rt>やすだ</rt></ruby><ruby>銀行<rt>ぎんこう</rt></ruby>に<ruby>変<rt>かわ</rt></ruby>っている。
元来が物やさしい生れの又次郎は、
<ruby>元来<rt>がんらい</rt></ruby>が<ruby>物<rt>もの</rt></ruby>やさしい<ruby>生<rt>うま</rt></ruby>れの<ruby>又次郎<rt>またじろう</rt></ruby>は、
悪い事をした覚はないから何も隠れる事も、恐れる事もないのだが、
<ruby>悪<rt>わる</rt></ruby>い<ruby>事<rt>こと</rt></ruby>をした<ruby>覚<rt>おぼえ</rt></ruby>はないから<ruby>何<rt>なに</rt></ruby>も<ruby>隠<rt>かく</rt></ruby>れる<ruby>事<rt>こと</rt></ruby>も、<ruby>恐<rt>おそ</rt></ruby>れる<ruby>事<rt>こと</rt></ruby>もないのだが、
もうよかろうという顔つきで、
もうよかろうという<ruby>顔<rt>かお</rt></ruby>つきで、
単に二人の好みの水音のことを話しているだけで、
<ruby>単<rt>たん</rt></ruby>に<ruby>二人<rt>ふたり</rt></ruby>の<ruby>好<rt>この</rt></ruby>みの<ruby>水音<rt>みずおと</rt></ruby>のことを<ruby>話<rt>はな</rt></ruby>しているだけで、
では、ただ村のものが可い加減な百物語。
では、ただ<ruby>村<rt>むら</rt></ruby>のものが<ruby>可<rt>い</rt></ruby>い<ruby>加減<rt>かげん</rt></ruby>な<ruby>百<rt>ひゃく</rt></ruby><ruby>物語<rt>ものがたり</rt></ruby>。
迂闊に懸け合いはできない。
<ruby>迂闊<rt>うかつ</rt></ruby>に<ruby>懸<rt>か</rt></ruby>け<ruby>合<rt>あ</rt></ruby>いはできない。
部屋が、みんなふさがっていました。
<ruby>部屋<rt>へや</rt></ruby>が、みんなふさがっていました。
売上げがどうなったやら、会計も行方不明で、
<ruby>売上<rt>うりあ</rt></ruby>げがどうなったやら、<ruby>会計<rt>かいけい</rt></ruby>も<ruby>行方<rt>ゆくえ</rt></ruby><ruby>不明<rt>ふめい</rt></ruby>で、
如海は、自分から馳け寄って行き、
<ruby>如海<rt>にょかい</rt></ruby>は、<ruby>自分<rt>じぶん</rt></ruby>から<ruby>馳<rt>は</rt></ruby>け<ruby>寄<rt>よ</rt></ruby>って<ruby>行<rt>い</rt></ruby>き、
それでも、なんか、玉井さんの眼には隠れるごとして、ショールで顔を埋めたり、
それでも、なんか、<ruby>玉井<rt>たまい</rt></ruby>さんの<ruby>眼<rt>め</rt></ruby>には<ruby>隠<rt>かく</rt></ruby>れるごとして、ショールで<ruby>顔<rt>かお</rt></ruby>を<ruby>埋<rt>う</rt></ruby>めたり、
九千メートルまでのぼってそうして精細な観測を遂げて来た人とでは
<ruby>九<rt>きゅう</rt></ruby><ruby>千<rt>せん</rt></ruby>メートルまでのぼってそうして<ruby>精細<rt>せいさい</rt></ruby>な<ruby>観測<rt>かんそく</rt></ruby>を<ruby>遂<rt>と</rt></ruby>げて<ruby>来<rt>き</rt></ruby>た<ruby>人<rt>ひと</rt></ruby>とでは
その中に、どんな恐しい悪魔がひそんでいるかわからないのである。
その<ruby>中<rt>なか</rt></ruby>に、どんな<ruby>恐<rt>おそろ</rt></ruby>しい<ruby>悪魔<rt>あくま</rt></ruby>がひそんでいるかわからないのである。
あくまで宝冠がほしいのだ。
あくまで<ruby>宝冠<rt>ほうかん</rt></ruby>がほしいのだ。
そこで彼は殺意を生じたが、
そこで<ruby>彼<rt>かれ</rt></ruby>は<ruby>殺意<rt>さつい</rt></ruby>を<ruby>生<rt>しょう</rt></ruby>じたが、
伸びて、繁って繚乱と咲いているカーネーションの花弁は美しくて、
<ruby>伸<rt>の</rt></ruby>びて、<ruby>繁<rt>しげ</rt></ruby>って<ruby>繚乱<rt>りょうらん</rt></ruby>と<ruby>咲<rt>さ</rt></ruby>いているカーネーションの<ruby>花弁<rt>かべん</rt></ruby>は<ruby>美<rt>うつく</rt></ruby>しくて、
銀の地に青や赤の七宝がおいてあり、
<ruby>銀<rt>ぎん</rt></ruby>の<ruby>地<rt>ち</rt></ruby>に<ruby>青<rt>あお</rt></ruby>や<ruby>赤<rt>あか</rt></ruby>の<ruby>七宝<rt>しっぽう</rt></ruby>がおいてあり、
その視線はぴったりとそこでとまった。
その<ruby>視線<rt>しせん</rt></ruby>はぴったりとそこでとまった。
うそ寒い秋の陽は、もう舂きかけていた。
うそ<ruby>寒<rt>さむ</rt></ruby>い<ruby>秋<rt>あき</rt></ruby>の<ruby>陽<rt>ひ</rt></ruby>は、もう<ruby>舂<rt>うすず</rt></ruby>きかけていた。